砂の道

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私はオアシスを旅立ち砂の中を歩いた。 そして不思議なことに気づいた。 父の杖が開けた穴が点々と続いているのだ。 この砂漠の中、砂は絶えず移動する。 杖で開けた穴なぞすぐに砂に埋まって 消えてしまうはずだ。 私は父と幼いころから歩いてそれが 当たり前だと思っていたし 父は後を振り向かない人だったので 私は疑問に思うこともなかった。 私は恐る恐る穴に手を当ててみた。 (湿っている・・・) 私は急いだ。前のオアシスに行くために。 そして急いで歩いて歩いてついに 前のオアシスへとたどり着いた。 そして、オアシスの門に入ると その前のオアシスから入った門へと 急いだ。 「嘘!」 私は手で顔を覆った。 そう、そこには小さな芽が 父の杖で開いた穴から芽吹いていたのだ。 「貴女の父上は、この砂の中に埋もれている 水脈を神通力で掘り当てる人だったのですよ。 そのことに生涯を費やした方でした」 私は後ろを振り向いた。 そこには、この街一の高僧がいらした。 そして言葉を続ける。 「貴女の父上のおかげでこの国は緑の国へと 姿を変えていっています。 ですから、貴女は家庭を持っても職をもっても そのどちらを持っても宜しいのですよ。 いかがされますか」 「お坊様。私にも父と同じ力があるのでしょうか」 すると高僧は一瞬くちごもって 「そうですね、あります」 「では、私は父のように進みます。 私が最後にいたオアシスの側に、 何者も住むことのできぬ、入ると奇妙な病にかかる ドームがあると聞いております。 私はその地へ進みます。 お坊様ありがとうございました」 私は一礼すると、オアシスを出る門へと向かった。 そしてこのオアシスの前のオアシスに向かった。 ただし前のオアシスには寄らず、その近くのドームへと 足を運んだ。
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