緑の道

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マシードは話し出した。 ここ十数年、何故か分からないが 各オアシスの周囲はオアシスの水の量より はるかの木々が生い茂り、 オアシス同士を結ぶ道沿いにも 木々が花々が絨毯のように広がるようになって 人々は喜んだよ? 作物も多く採れるようになったしね。 だけどね、いいことばかりじゃなかったんだ。 何だと思う? 人口が増えすぎたんだ。 あれだけ十分に緑があるのにさ オアシスは増えた人口を支えきれなくなったんだ。 それに水もね。 そこで各オアシス間が不穏になってきた。 分かるかな? 他のオアシスを奪おうと画策する者達が 各オアシスで出始めたんだ。 足りなければ奪えばいいってね。 今は政治家や高僧達が抑えているけれど いつ爆発するか分からない状況なんだ。 それで人々の間で、お偉いさんたちは 砂漠のどこかに水源があるのを知っていて それを隠しているのではないかって噂が 広まってさ。 どこのオアシスでも民衆が お偉いさんたちに水源の在りかを 教えるように迫ってさ。 でもお偉いさんたちは、 水源を巡って争いが起きるのを恐れて 教えてくれないんだよ。 そこでだ、俺みたいな若者に 懸賞金を出して水源を探させようって ことになったんだな。 マシードは一気にまくし立てた。 そして 「それでさ、あんたは魔法で水が 出せるんじゃないのかい? 頼むよ、その魔法でこの地に 雨をたくさん降らしてくれないかな。 もっと木々が生い茂るように」 話を聞き終えた娘は目を閉じた。
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