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「ハンバーグ」
「ハンバーグ?家で食べる?ひき肉あったかなー」
「違う。さっきの質問の答え。羽衣が俺に初めて作ってくれた料理、ハンバーグだろ」
「えっ?何…」
冷蔵庫の方を見ていた羽衣は驚いた顔をして振り返った。
「えっと、初デートの場所は水族館で、好きな色はピンク。あと何だったっけ?」
どんどん質問に答えている俺を羽衣は唖然とした表情で見ている。
強張ったような顔からゆるゆるとした表情に変わっていくのがわかる。
先程は違った意味で潤んだ目で俺を見つめてくる。
「初めてのクリスマスプレゼントはマフラーで、初めてのバレンタインデーはハートの形のガトーショコラだっただろう?」
「…覚えてたの?」
「忘れるわけねーだろ、俺が羽衣のこと。…大事な彼女のことだぞ」
そう答えたのはいいものの、やっぱり照れくさくて羽衣の顔が見れずスマホの真っ暗のままの画面を見つめたまま話す。
「大体なあ、告白したのは私からとか言うけどそんなのタイミングの問題だし、浮気とか男ばっかりの職場で出会いもないし。しかも俺みたいな女心が全然わかってなくて彼女のこと泣かせるようなやつがモテるわけないから、変な心配なんかすんなよな」
そう一気に話すと、目の端で羽衣がこちらを見つめて笑っているのがわかる。
先程とは違い、明るい笑い方だ。
「ふふっ」
「何笑ってんだよ」
「んーん。何でもない」
笑い声に少し気まずい気分でぶっきらぼうに返すも、羽衣はさっきの名残で目は潤んでいるもののニコニコしつつこちらを見ている。
「何だよ。言えよ」
再度言うように促すと、羽衣は少し茶化すように答える。
「私って結構愛されてたんだなあと思って」
羽衣はそう言って何だか嬉しそうだ。
何だか居心地が悪い気分になるが、羽衣の不安が少しでも消えてくれるなら何でもいい。
「そうだよ。悪いかよ」
俺がそう返すと、一瞬キョトンとした顔をしたものの羽衣の顔は照れたような満面の笑みに変わる。
俺が恋した羽衣の笑顔だ。
やはり羽衣は笑ってる顔が一番いい。
もう二度と不安にはさせないようにと心に誓う。
言葉にするのは照れくさくて毎日は伝えられないけれど、いつだってずっと俺は君のこと全部、大好きだ。
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