記憶の引き出し

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 「倒産したみたいです、14〜5年くらい前の話だと思います」 「そうなんですか?」 「えぇ。古い話ですし、ローカルスーパーの情報ですのでネット検索では上手くヒットしてくれないと思います」 「それでかぁ……どおりで地図で見つからんかった訳や」  彼は尼っ子らしい関西弁でそう言った後にっと笑ってきた。この顔どっかで……なんて思っていると車内アナウンスが次の停車駅を告げる。 「僕ここで降りるんで……突然お声掛けした上に変な話にお付き合い頂きありがとうございました」 「いえ、私も昔を思い出せて楽しかったです」  彼は可愛らしい笑顔を崩さぬままペコリと頭を下げ、流されるように降車していった。最初はびっくりしたけどなかなかな好青年だったな……その日私は気分良く過ごすことができた。
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