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「乱暴にしまったから、きっとぐちゃぐちゃになってる」
どうにか諦めてもらおうと、あれこれ理由を並べてみるけれど、陸は良しとしてくれない。
「味は変わらないと思うけど。ねえ、華夜子の手作りなの?」
「…そう、だけど。けどさ」
「そんなに気になるなら、形が崩れてなさそうなの一個だけ頂戴。それで今日は我慢する」
不本意でありながら、話を振ったのは自分。
そこまで言われれば、もう従うしかなかった。
華夜子は鞄からお弁当箱を取り出し、膝の上で恐る恐る蓋を開けてみる。
陸が横から覗こうとしたので、華夜子は叱る。
「見ちゃだめ!もの凄い事になってるから」
華夜子の迫力に陸はたじろぎ、済みませんと頭を下げる。
盗み見されないよう睨みを利かせながら、祈るような気持ちで確認する。
すると、中身はほぼ変わらず、ご飯もおかずも綺麗に収まっていた。
でもそんな事を教えたら、全部食べたいとか言われ兼ねない。
それは流石に勘弁して欲しいから、その事実は伏せておく。
おかずを一つ彼に差し出そうとして、華夜子ははたと止まった。
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