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救いを求めてくる華夜子に、陸は首を傾げる。
「どうやってあげたらいいかなって。…直接、手に乗せてもいい?」
中身を見せる訳にはいかないから、お弁当箱から直に取ってもらう選択肢はない。
でも、使用済の箸であげていいのだろうか。
そこまでの潔癖症だったら最初から欲しがらないだろうけど、汚く思われないだろうか。
除菌シートは常備してあるけど、自分の手で掴んで渡すのはやっぱりなしだろうし。
突き詰めると結論として、あげないって事でいいのではないかと思えてくるが、陸はその考えをあっさり却下する。
「え。何が心配なのか、さっぱり分からないんだけど」
悩むだけ無駄だった。
この彼には悩みなんて概念、端から存在しないのだろう。
華夜子は腹を括った。
「玉子焼き」
「え?」
「あと一個残ってるのがちらっと見えた。玉子焼きがいい」
陸は華夜子に向けて、大きく口を開けた。
「…なに?」
華夜子は非常に嫌な予感がする。
得てしてこういう時の勘は、実によく当たる。
「何って『ちょうだい』だよ」
「絶対嫌っ!」
けろりと告げる陸に被せるように、華夜子は速攻で叫んだ。
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