5 玉子焼き

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救いを求めてくる華夜子に、陸は首を傾げる。 「どうやってあげたらいいかなって。…直接、手に乗せてもいい?」 中身を見せる訳にはいかないから、お弁当箱から直に取ってもらう選択肢はない。 でも、使用済の箸であげていいのだろうか。 そこまでの潔癖症だったら最初から欲しがらないだろうけど、汚く思われないだろうか。 除菌シートは常備してあるけど、自分の手で掴んで渡すのはやっぱりなしだろうし。 突き詰めると結論として、あげないって事でいいのではないかと思えてくるが、陸はその考えをあっさり却下する。 「え。何が心配なのか、さっぱり分からないんだけど」 悩むだけ無駄だった。 この彼には悩みなんて概念、(はな)から存在しないのだろう。 華夜子は腹を(くく)った。 「玉子焼き」 「え?」 「あと一個残ってるのがちらっと見えた。玉子焼きがいい」 陸は華夜子に向けて、大きく口を開けた。 「…なに?」 華夜子は非常に嫌な予感がする。 得てしてこういう時の勘は、実によく当たる。 「何って『ちょうだい』だよ」 「絶対嫌っ!」 けろりと告げる陸に被せるように、華夜子は速攻で叫んだ。
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