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2 大学一の有名人
朝一の講義に出席する為に、教室までの道のりを一人辿っていた。
廊下を進んでいれば向かい側から、賑やかな男子学生数人の集団が見える。
低血圧気味な事もあり、朝はどちらかと言うと苦手な華夜子は、小さな溜め息を漏らした。
元気だなと羨ましい反面、正直ちょっと静かにして欲しいとも思ってしまう。
電車に揺られ、少し酔ってしまったようでもあり、今朝は気分がいまいち良くない。
自動販売機で冷たい飲み物を買って行こうー考えていた華夜子の瞳が、大きく見開かれる。
近づく男子グループの中心にいた彼と、図らずもばっちり目が合ってしまった。
慌てて視線を外し、擦れ違うまでその状態を維持する事に集中する。
びくびくしながら歩を進めていたのだが、拍子抜けする程何も起こらない。
友達と笑い合う男子達の声はやがて小さくなり、華夜子は心の底から安堵する。
後ろを振り返る事なく、早歩きで廊下を左に折れ、食堂の入り口にある自動販売機の前で深呼吸をする。
何台もの自販機がずらりと並んでいたが、悩むまでもなく飲みたい物はいつも決まっていた。
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