2 大学一の有名人

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「おねーさんってば」 けれど脚の長い彼にとっては、この程度の速さなど造作もないらしい。 追いつかれ、すぐに肩が並んだ。 余裕すら感じられる陸の口調と笑みに、やはり我慢は出来なくなる。 「さっきからおねーさんおねーさんって、一体なんなの!?あなた私の弟か何か?」 華夜子は立ち止まり、陸を睨み付ける。 廊下を往来する学生達の注目の的となるが、今の華夜子にとってそんな事はどうでも良かった。 何故だか知らないけれど、自分に纏わりついて離れない厄介な存在。 一刻も早く、それをどうにか遠ざけたかった。 「だって、おねーさんじゃん」 しかし当の本人は華夜子の迫力に物怖じもせず、しれっと言い放つ。 「ね。俺の一個上の、経済学部三年、御堂(みどう)華夜子さん」 全てを見透かしたような陸の両眼に、華夜子の頬が火照る。 「…乃愛に訊いたの」 魅入られないように明後日の方向を見ながら、華夜子は吐き捨てるように呟く。 昨日の昼休み、彼の相手をしていた彼女。 特段親しくはない。 でも会えば挨拶は交わすし、雑談程度もする、クラスメートのひとりだった。 陸は華夜子の質問に答える代わりに、カラーコンタクトを入れた茶色い瞳を細めた。
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