2 大学一の有名人

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「あっそう」 これ以上彼のペースに巻き込まれないよう、華夜子は素っ気なく返答する。 今度こそ講義室に向かおうとすれば、長身の陸が立ちはだかる。 「…まだ何かあるの」 ただでさえ今朝は気分が優れない。 募るいらいらを隠し切れず、華夜子は陸を見上げた。 「講義が始まるから、もう行きたいんだけど」 「俺も次の講義は本館」 真正面を指差し、陸は笑った。 本館に向かうには、この真っ直ぐな廊下を渡るしかない。 つまり、ここを歩いてる自分は、本館に行こうとしてると嫌でも彼に知らせてるようなもの。 やられた-思ったけど、もう手遅れだった。 「…さっきお友達と、真逆の方向に進んでたよね?」 「あいつらとは、履修してる授業が違うから」 あっさりかわされる。 絶対嘘だと分かっていながら、対処のしようがない。 華夜子は深々と溜め息を()く。 並んで歩くなんて冗談じゃない。 せめて半歩でも彼の先を行くよう、必死に足を動かすしかなかった。 そんな華夜子を、陸は面白そうに追う。 「おねーさん、もしかして俺の事、嫌ってる?」 「教室であんな場面見せられればね」 「だから謝ったじゃん」 「やりたきゃ、ラブホでもなんでも行けば。超迷惑。もてる男は女を取っ替え引っ替え大変ね」 最大級の厭味のつもりだったのに、しかし陸には全く効いてない。 それどころか、逆に何故か驚かれた。
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