学院編入

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放課後___ 一昨日の入学式の反省会を行った後に、役員全員の役職が決まっていないため、それを決めようという話になっていた。 昴は午後から一度、会社の方に顔を出さなくてはいけなくなったため、この場にはいない。 (なんで、僕に態々メールしてくるのかな……) 燈夜のスマホには、昴から不在になる旨を伝えるメールが来ていた。 昼休みに、燈夜が昴へ連絡先を教えるべくメールしたことで、昴からそのように返信が来ていた。 (そんなの、先生に言えばいいのに……) 昴は燈夜にしか連絡しておらず、全員が集まったところで昴の不参加を告げた。 社会人として、報連相の報告・連絡が出来ていないのはどうなのか、と思う燈夜だった。 (しかも、いらないメールまで……) 昴からのメールは、ただ不参加の連絡だけでなかった。 『急用で会社に一度、顔を出してくる。会議が終わる頃にはそっちに戻れると思うから、俺が家まで送ってやろう。』 と、いうものだった。 燈夜は昴のありがた迷惑な行為をきちんと断る返信をうって、電源を切っておく。 (なんだか、面倒な人に教えちゃった気がする……大道寺にも後で連絡しておこう) ◇◇◇ 会議が始まってから暫くたった。 しかし、一向に役職が決まらないという状況である。 役職は生徒会長、生徒会副会長、会計2名、書記2名、風紀管理長3名である。 しかし、皆、口を揃えて言うことがあった。 『自己負担が少ないもの』を望むと。 (皆、理事長の話を聴いて理解を示していたし、嫌々だけど納得もしてたみたいなんだけどなぁ……それと、これとはってやつかな) 「お前らぁ早く決めろよ。俺だってまだ、今日の仕事終わってねぇんだよ」 「オレは面倒な役職なんかぜってぇ嫌だ!」 「俺も面倒いことは断る」 「ぼくも、なるべく負担のない役職がいいですね」 「オレもー」 「俺は別に、どうせ役員としての役目は変わらないから何でもいい」 「ボクはぁ自分の趣味の時間がとられないやつがいいなぁ」 「私も、紫倉と同意見ですね。役員としての役目は変わりませんので、何でもいいですかね」 「わいも、会長さんとかやないなら、何でもええよ」 ずっとこの調子である。 燈夜は、昴が戻ってくる前にさっさと帰りたかった。戻ってきたら、強制的に家まで送られそうだと思っているからだった。 (う~ん……どうするか。皆の気質的に合ってそうな役職があるんだよなぁ……でも、それを僕が言うのもなぁ) 燈夜の中では皆の役職が決まっていた。 そして、自分が望む役職も。 そこで、公正公平を期すために彼らに提案した。 (まぁ、公正公平でもないんだけど……) 「くじ引きで決めましょう」 斯くして、役員全員の役職が無事に決まった。 ◇◇◇ 罹央side___ そいつ、東雲 燈夜の第一印象は見たことないくらい美人な奴、だった。 俺が一瞬でも、気をとられるくらい。 理事長がさっさと席に座るように促したから、他の奴等も声をかけられない様子だった。 俺はそいつから一番離れた対角線上の位置に座った。別に意図したことじゃぁなかったが、好都合だと思った。 何で、此処に見たことねぇ奴が居んのか疑問に思ったが、それは理事長から聴いた話で一応納得した。 (多分嘘は言ってねぇが、真実も全部は言ってねぇ、ってとこだろぉな) そんで、自己紹介が終わって解散ってなったときに、そいつに理事長が耳打ちしてた。 (あの理事長……) 理事長は、俺等に目で牽制しやがった。 だが、理事長が出ていった後、そんな事関係ぇねぇとばかりに、あの紅汰バカと1年の『皇雅』幹部がそいつに近づいていった。 (アイツら……気づいてなかったな) そんで、友達とかなんとかの話をしてた。 俺はあんま聴いてなかったけど、その友達の下りで、名前で呼ぶことがどうとか言ってた。 そしたら、喚き始めた奴等がいた。 その中には夏希までいる始末だ。 面倒事はやめてほしい。俺は心底そう思った。 そしたら、そいつが提案してきた。 全員と連絡先を交換すればいいと。 そいつは遠慮したい、全員が思ったことだろぉな。 だから俺も含めて、全員がそいつとだけ・・交換した。 その流れで、なんでか他の奴等は友達云々に話が飛んで、最終的に下の名前で呼び合うってカタチに落ち着いた。 (俺も何、了解してんだか……) 1限はそんな感じで終わった。 そんで、放課後。 役員全員の役職を決めるって話だ。 理事長は不参加らしい。それを何故かそいつ、燈夜から聴いた。 さっきの耳打ちは多分この話か、それに準ずることだったんだろ。 全員が案の定、面倒い役職を拒否しやがるからなかなか決まんねぇ。俺もこればっかりは譲れねぇ。面倒い事は嫌いだかんな。 そこで、しびれを切らした燈夜が阿保共を納得させるための妥協案として、くじ引きを提案した。 くじ引き何てもんは、公正公平に見えるがその実、いくらでも細工できちまうしろもんだ。 俺はまず疑った。 燈夜はこの学院の編入試験に受かるくらい頭がいい。更に、理事長よりも秘匿事項だったから誰も情報を手に入れられてねぇ、そんな存在だ。 だが、同時にそんな謎だらけの奴が俺等を、どう扱うのか気になった。くじ引きで何か起こす気なのか……ただ単に興味があった。 俺は面倒い事は嫌いだが、同時に興味関心があるもんとか、好奇心を刺激してくるもんに対しては寛容になる。 だから、くじ引きを引いた。 (マジかよ……) 俺が引いたのは、俺が2番目に嫌だと思った役職だった。 (望み通り……か……) 燈夜は俺の表情と手元のくじをみて笑っていた。 『罹央先輩、|生徒会副会長として、しっかり仕事して僕を・・助けてくださいね?よろしくお願いしますね』 言葉に解りやすく含ませながら、燈夜は言っていた。その段階では燈夜はまだ、くじを引いてねぇのにな。 (やっぱ、望み通りに引かせた・・・・のか) 全員の結果は燈夜が望んだ通りなんだろ。 俺以外にも気付いてる奴もいたんだろぉけど、上手いこと証拠を見せねぇんだよな。 役職に納得してる奴等が大半だから、あんま余計なことは言わねぇことにした。 それに___ (俺は興味を持ったモノに対しては、とことん追求して、追究したくなる質なんだよな) 俺は好奇心が強いんだろうな。 面倒い事が嫌いなのと同じくらい。 両価感情・両面価値アンビバレンスだ。 (俺が興味を持った者やつか……) 好奇心は猫をも殺す、か。 肝に命じておかねぇと、何でか燈夜に関しては笑えねぇ冗談になりそうだ。 (少しずつでも、お前の事を教えて貰うとするか) 生徒会副会長として、生徒会長の一番近くで。 (こっちこそ、よろしくなぁ___燈夜)
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