王妃オフィーリア

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愛を享受する事は、選ばれたる者の恍惚なり。 薔薇の庭園にて。 オフィーリア『あゝ、キャメロットよ。薔薇の薫りが芳しき庭園に招かれし憐れな騎士』 とは言い乍、キャメロットに抱き着く。 王冠を落としている事に気付かずに。 キャメロット『王妃、近々仏蘭西との戦いが在ります。』 其れを聞いたオフィーリアは一瞬驚き乍も目から雫を流す。 丸で、庭園に咲き誇る薔薇の朝露のやうに。 キャメロット『王妃、否、オフィーリア。泣いてはいけません』 そう言って右耳につけていた耳飾りを渡す。 オフィーリア『此れは。』 暫し戸惑う。 キャメロット『オフィーリア、私が居ない間は此れを右耳に身に付けて於いて下さい。』 キャメロット『貴方様は王妃ですから、気丈に振舞って下さい。私も心置きなく戦えますから』 そう言ってオフィーリアの涙を指で拭う。 オフィーリア『判った。私は、もう泣いたりしない』 オフィーリア、表情に英気が戻る。 キャメロット『付けても宜しいでしょうか』 オフィーリアは無言で肯く。 キャメロット『失礼致します』 キャメロットは、オフィーリアの右耳に触れる。 彼女の右耳は真っ赤に熟れた林檎のように赤く染めていた。 キャメロット『出来ました』 オフィーリア『如何じゃ。似合うか』 顔を赤らめ乍キャメロットに尋ねる。 キャメロット『良え、とても御似合いですよ』 そう言い乍、キャメロットは優しい微笑を浮かべる。 オフィーリア『キャメロット。御武運を祈っている』 オフィーリア、祈る。 晩餐の儀にて。 国王『此の中に裏切り者が二人居る』 辺りが座喚き立つ。 オフィーリア『静かに!』 そう言い乍も手が微かに震える。 国王『其の裏切り者達は、揃いの耳飾りをして居る様だ』 国王、オフィーリアとキャメロットを射竦める。 再び、辺りが座喚く。 其れって、王妃とキャメロットではないか。 矢張り、あの二人が。 赦される事では無かろう。 国王、ほくそゑむ。 国王『オフィーリア、キャメロット。朕は、貴様等の事は信頼して居たのだがな』 オフィーリア、泣き崩れ王冠を地に落とす。 キャメロット、オフィーリアを思わず抱き締める。 オフィーリア『あゝあ、憐れな騎士キャメロット。芳しき薔薇の名は何だっただろう!』 キャメロット『其の名は、真実の愛!』 国王『ええい!一寸は廻りを見よ!』 辺りニ座喚きト悲鳴が入り交じる。 国王『皆の者よ。オフィーリアとキャメロットヲ如何致すか』 勿論死刑だ!淫乱な王妃と騎士の首を刎ねよ! 国王『満場一致で、貴様等は死刑だ!』 オフィーリア、更に泣き崩れる。 キャメロット、目に表情は無い。 牢獄。 オフィーリア『あゝ!神よ!何故、愛し合う者は引き裂かれる!常識と云う名の鎖に繋がれた我等に道は在るのか!』 トントン。 岩壁越しにノック音。 キャメロット『オフィーリア、聞こえますか。』 オフィーリア『あゝ!我が愛しのキャメロット!』 キャメロット『あゝ!愛しのオフィーリア!良く聞いて下さい』 オフィーリア、耳を澄ませる。 キャメロット『愛を享受する事は、選ばれたる者の恍惚なり。』 そう言い、二人は岩壁越しに接吻を交した。 翌朝。 国王『此れより、オフィーリアとキャメロットを処刑する!』 国王の叫びと共に、二人の首が落とされた。 其々の片耳には、揃いの耳飾りが煌めいて居た。
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