テレビの中の君

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すると、拓海が急にテレビを消した。 え、と小さな声を出した。表情を消した彼が鞄の中から何かを取り出す。 紺色のその小さな箱のようなものをすっと開けると 「結婚してほしい」 「…は?」 その言葉と同時に見たこともないほど大きなダイヤが光り輝く指輪が目の前の視界いっぱいに広がる。 唖然とする私をよそに彼は淡々と言った。 「来年は大河ドラマの主演も決まったんだ。忙しくなるからその前に…―」 「いやいやいやいや、え、何。ちょっと待って」 「ん?何が?」 普段から感情の起伏の少ない彼はにこりともしないで言葉を紡いでいくが、いったい何を言っているんだ。 あ、もしかして台本の練習か?とも思ったがそれにしたってこの目の前に光る指輪はハリーウィンストンとしっかり書かれてあり無知な私だって知っているそのブランドにゆっくりと瞬きを繰り返した。 「ちょっと待って!」 「だから何?」 「いや…これ、冗談か何か?」 「冗談?なんで?そんなわけないじゃん。これ、沙月のために買ったんだよ」 …これは、うん。 彼は天然か何かなのだろうか。
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