テレビの中の君

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「あの…さ、」 「うん」 「私たち、付き合ってもないよね?」 そう、私たちは付き合ってすらない。そんな感情芽生えたこともない。 彼もそうだと思っていた。 ずっと家族のようなそんな存在だと思っていた。でも、それは私だけだった? パニックに近い状態で私は冷静さを取り戻すために深呼吸をした。 大きく肺を動かして酸素を取り入れた。 顔色一つ変えなかった彼が、ほんの少し顔を歪めた。 「うん、そうだけど」 「いやいやいや、え?どういうこと?付き合ってない相手にプロポーズって…」 「付き合うことと結婚、俺にとっては同じだから。だから今まで付き合ったことないし」 「…でも、なんか女の子いなかった?高校、大学の時」 「あー、セックスだけね、でも全然よくないよ。好きな子じゃないと」 抑揚のない声で言う彼の横顔は本当に美しくて女の私でも見惚れてしまう。 つまり、だ。 彼にとって付き合うと結婚の定義はほぼ一緒で、私いや…世間一般的にかなりかけ離れた価値観を持っているようだ。 長年一緒にいるけどそんな考えを持っているとは知らなかった。
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