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「で、今の反応からして沙月は俺と結婚は無理ってことか」
「…」
そりゃそうだろう、と心で反応しつついまいち感情の読めない拓海を視界に捉えたまま、どうしようか考えた。
拓海とは家族のような関係をこれからも築いていくのだと思っていた。でも、今それが壊れてしまったような気がする。
気まずくて目線を下げてしまう。
「う、嬉しいよ?でも…ごめん、拓海のことは弟みたいに思ってて」
「弟?」
その言葉に拓海が珍しく反応した。
常に無気力に見えるし何を考えているかわからない。芸能界に入ったときは本当に心配した。だって、そういう世界、嫌いだと思っていたから。
そっと彼を見ると、
「拓海?」
明らかに怒っている顔をしていた。
こんな表情初めて見た気がする。彼は端麗な顔をしているのにアイドル枠でもなく演技派として今もテレビに引っ張りだこだ。
数ある賞を受賞するほど、彼は演技がうまい。でも、今のその表情は明らかに怒っている。
そして、急に視界が揺れた
「え、…」
「弟って何?俺、もう立派な男だけど」
狭いソファに体が沈んで私は瞬きも忘れて彼を見た。
天井と拓海の顔が視界に入り込んみ、あぁ…押し倒されたのだと理解した。
したけど、言葉が出てこない。
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