カラカラカラカラ

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 カラカラカラカラと回収したものが転がってくる。  それが目の前の細長い机の上に並べられた。 「うむ」  五十代くらいの人の良さそうな上司が回収されたものを観察する。 「これがいいかな」  上司がそのうちの1つの前に立つ。  それは目が虚ろな二十代くらいの男性だった。 「こいつはどんな奴なんです?」  俺は目の前のものを眺めながら上司に聞いた。  俺はまだ、この工場に入ったばかりの新人で、今日は見学をしている。 「こいつは、今まで勉強を頑張ったが、成果がでなかった奴でな、あまりの無力さに空になってしまったようだ」  ラベルと手に持っている資料を見ながら、上司が答えた。  人間は無気力感が強くなり過ぎると、空になる。そして、まるでマネキンのような質感に体が変化をする。  それを回収して、再利用するのがこの工場だ。 「よし、こいつがいいな」  そう言うと、上司は先に吸盤がついた大きな注射器を取り出す。  それに専用のカードリッジを取り付ける。  その吸盤を頭に付けて、注射器を押して、中のものを注入する。  すると、目の前のものの目が活力を取り戻し、体がごくごく正常な人間になる。  注入されたばかりの人間は、すぐに眠るので、担当の班に引き渡された。  明日から、人間としての正常な生活をするのだろう。 「今、注入したのはなんです?」 「事故に遭って植物状態になってしまった男性だよ」  カードリッジには、活力はあるが体が不自由になってしまった人間の魂が入っている。  その魂を空になった人間に入れるのが、この工場の仕事だ。  そして次に魂を入れる器を選ぶ上司に、ふと思い付いた疑問を投げた。 「そういえば、元の魂ってどうなるんですか?」  空になったとはいえ、元の魂は入れっぱなしなのだ。 「ああ、それはなぁ…」  目の前にある大量の空になった人間に目をやりながら、上司は答えた。 「そういう魂は自然消滅するから、心配ない」
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