第一章 息

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「……ダメ?」  キスしちゃダメなのか、と訊いているんだ。要人は。 「駄目に決まってるだろう!」 「どうして?」  すねたような、要人の顔。  ドキリとした。  初めて見る、表情。  初めて見る、要人の顔。 「そんな……、付き合い始めてすぐ……、キスだなんて」 「付き合いは、子どもの頃からあるだろ?」 「とにかく、ダメなものはダメだ!」  ちぇッ、と唇を尖らせながら、要人は再び歩き始めた。  優希も並んで歩いたが、頬の火照りが治まらない。  昨日と違う、昨日までと違う要人が確かに僕の隣にいるんだ。
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