第二章 手

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 要人の実家はいわゆる名家で、広い敷地に時代がかった豪邸がどんと構えている。  だが、滅多なことでは子どもは自分の家に友達を招いたりはできない。  大人の社交場でもある邸宅に、騒がしい子どもは敬遠されていた。  優希は毛並の良い大人しい子どもだったので、何回かはその豪邸にお邪魔した事がある。  ずいぶん広い要人の部屋に驚いた記憶が、よみがえってきた。  そして優希には、ピンときた。  これは、今まで付き合ってきた女子たちとは別枠で自分を想っている、ということを示すための行動だ。  君は、君だけは特別。  そんな要人の心の声が、はっきり聞こえてきそうだ。  そしてその考え通り、要人は優希を特別に想っていた。  これまで付き合ってきた女の子たちとは、明らかに違うこと。  それは、自分の方から付き合ってほしい、と願い出たことだった。  これまでは、請われて何となくそのまま付き合ってきた。  自分を好きだと言ってくれる人がいる。  悪い子ではなさそうだし、まぁいいか。  そんな風に考えては付き合い、別れを繰り返してきた。
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