第二章 手

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「明日は、何も持たずに来ていいから。歯ブラシもパジャマも、全部こっちで用意するから」  そう電話で話す要人の声は、ウキウキと弾んでいる。 「ありがとう。でも、なぜわざわざ電話で? ラインでも済むだろ」 「それは……」  優希の声が聞きたかったから、というのはキザかな、という要人の返事に、優希は頬を赤くした。  本当に、どうしちゃったんだ、要人は!  次から次へと繰り出されてくる愛情表現に、優希は戸惑っていた。  僕だけが、変わらなさすぎるのかな。  そういう風に考えたりもした。  幼馴染の要人が、恋人になった。  そのことを、もう少し意識しないといけないのかな。  でも、要人は要人だ。  そんなに突然、態度を変えるなんて僕には無理だ。  とにかく、明日は久々に要人のところへお泊りだ。  子どもの頃はよく夜更かしして、将来の夢など語り合ったものだ。  懐かしいな、などと考えながら、優希はその晩眠りに就いた。
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