靴底を炙るための紙切れ

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  つまり、まずは携帯電話を買い換えねばならない。  携帯電話のショップは、確か駅前にあったと思う。  以前は確か自転車で行き、30分位かかった気がするが、今の僕にはそんな元気は無い。ここは車で行きたいところだ。  僕は車でショップに行こうと思い、ふと気が付く。  ……車が無い。  そういえば、僕は車を持っていなかった。  となると、車を買う必要がある。  自転車で行けばいいのだが、とにかく元気が無い。  ストレス無く携帯電話を買い換えるためには、車を買う必要があるのだ。車を買うためには、いくら程必要だろう。200万程あれば足りるだろうか。  ……そんなお金は無い。  そういえば、僕はお金を持っていなかった。  よく考えたら、携帯電話を買い換えたり電気シェーバーを買う金銭的な余裕も無い気がしてきたが、どうすればいいんだろう?  僕は少し考えた。  ……働かねばならない。  そういえば、僕はもうじき30歳だ。  やはり働かねば、お金は無い。  お金が無いと、車は買えないし、車が無ければ携帯電話も換えられず、そうなると家電量販店の場所がわからないので髭が剃れなくて、だからライターで靴を炙れなくなってティッシュペーパーが買えずにゴミ収集の人が怪我をしてしまう。それは僕の本意ではない。 『いい加減、人並みに働きなさい』  僕は母にそう教わった気がする。
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