靴底を炙るための紙切れ

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『割り箸や爪楊枝をゴミ箱に捨てる時は、必ずティッシュペーパーで尖端を包んで、ゴミ回収の人が万が一にも怪我をしないようにしなさい』  僕は母にそう教えられ、育った。  今、僕は苦悩している。  昼食。自宅でカップラーメンを食べ、後片付けをする段にきて、割り箸を包むティッシュペーパーを切らしていることに気が付いた。  周囲を少し探してみるが、買い置きはおろか、ポケットティッシュさえも見つからない。  ……困った。  トイレットペーパーでの代用も考えたが、やはり母の教えは忠実に守りたい。母はトイレットペーパーではなく、ティッシュペーパーと言った。だとすれば、今の僕にはトイレットペーパーではなく、ティッシュペーパーが必要なのだ。  となると、やはり買い出しに行かねばならない。  先程カップラーメンを買ってきたばかりだというのに、またコンビニエンスストアまで行かねばならなくなってしまったのだが、母の教えに背くわけにもいかず、僕は財布と携帯電話をポケットに捩じ込み、玄関へと向かった。
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