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ネオン煌めく眠らない街東京。その夜の象徴と言ってもいい新宿歌舞伎町。
そしてその二丁目は野太い声や変に甲高い声、ガサガサに酒焼けした声とネオン以上にさまざまなものがいろんな意味で眩しい界隈。
今日もそんな多種多様な声が行き交う中にあるスナック満開から客が帰る所だ。
「あだっちゃんまた来てねー。」
「のぶ子と真澄ちゃんがもっとセクシーになったら来てやるわーい。」
「ちょっといつもそれ言うー?じゃあ明日にはセクシーになってるからよろしくー。」
店先で酔った中年男性客にハイテンションで送り出すのぶ子に対して、終始笑顔で愛想良く手を振っている真澄。
客を無事に送り出すと大きいため息をついて真澄は店に戻る。
「はあ、また気付かれなかったー。」
「あんたまだそんなこと言ってるの?」
「真澄の色気の無さじゃ無理無理、あたしの方が色気と胸あるもの。」
店のカウンターで落ち込む真澄に店頭の看板を片づけるのぶ子とテーブルでグラスを片付ける義美が追い打ちをかける。
ここスナック満開はオカマバーでそれなりに繁盛している。
メンバーは比較的に美人だがファッションセンスや家事が致命的な義美に、初見でオカマと分かるTHEオカマと言った感じののぶ子。
それからもう一人の坂本真澄だがこの真澄は普通の女子であるもちろん戸籍上も女性であるし恋愛対象もノンケの男性である。
「ちょっとそんなとこでサボってないであんたも片付けしなさいよ。」
なぜ真澄がオカマバーで働いているのかと言うと、カウンターの向こうで片付けをしているこの店のママのきららが真澄を助けたのがきっかけだった。
数か月前の事、真澄が会社の経営不振で人員整理の対象でクビになりやけ酒をして店前で爆睡していた所をきららが仕方なしに助けたのが初めての出会いだった。
その時に店のソファー席で寝ていた真澄を起こしたのはベロベロで酔っぱらった客だったのだが、女と気付かず叩き起こした上に胸を鷲掴みすると言う真澄にすればとんでもない事件だった。
だが店は大爆笑に包まれ、終いには「掴むほどなかったわー。」と言われ更なる笑いと共に「ママの方がでかかったな。」とまで言われた。
固まっていた真澄も流石にぶち切れて「そんな事ない!証明してやる。」と言ったのにきららが乗っかり真澄が働くことになったのだ。
条件として「女と分かってもらえたら辞めていい」と勤め出した真澄だったが、大半で来るのは既に酔って出来上がった客で素面でくる客は少なくそんな人にも気付いてもらえずにこうして今まで働き続けている。
「まあ店の前であんだけ股おっ広げて寝てる様じゃ女捨ててる様なもんよ。」
「だから、あれは酔ってただけですし。」
「疲れたー、きららママ私塩ラーメンでお願い。」
「お疲れさまですーきららママ私は醤油でお願いします。」
閉店した店に入ってきたのは隣の店のClubムーンの人気ナンバー1・2のひとみと加奈だった。
Clubムーンはこのオカマバーが並ぶ界隈では珍しい高級クラブで、オカマしかいないが銀座にあってもおかしくないほどの人材ばかり。
今満開に来たひとみは外見は少し綺麗なぐらいでナンバー1?と疑問に思う所だが帰国子女でハーバード大学に通っていた経歴があるほど秀才で器量もあってナンバー1に君臨している。
ナンバー2の加奈は非の打ちどころがない正に美人、北川景子似の顔立ちでモデルにいて何の問題ない峰不二子の様な体型だ。
「あんた達毎晩のように来るけどうちラーメン屋じゃないのよ?」
「でも、きららママの料理美味しいんだもん。さすが三ツ星ホテルのシェフやってただけある。」
「え?ママって三ツ星ホテルのシェフ?!」
「そんなことより、昨日のお店貸切誰が来たのよ?」
きららの経歴に驚く真澄を押し除けて義美が加奈に問いかける、同じ年で何かと趣味が合う二人は仲が良く閉店後は二人で出掛けることも多い仲。
「貸切ってそんな珍しい事なんです?」
「だって高級クラブよ、しかも昨日はスーツ来たのボディーガードみたいのもいたし。」
「あら、あんた達誰が来てたか知らないの?ロバート・ミラーとサントス・マグランよ。」
「うっそーー!?ハリウッドスターの?」
「あたしトラブルスナイパー超好きなのにー!」
きららから出てきた超大物ハリウッド俳優の名前が出て満開のメンバーは絶叫に包まれた。
今大人気のハリウッド俳優二人でダブル主演のアクション映画のトラブルスナイパーは5シリーズまである大作でそんな二人が来たと成れば驚くのも無理はなかった。
「で、お持ち帰りされたって聞いたけど誰よ?ラーメン出すんだから言いなさい。」
「えー、ひとみさんどうします?」
「んふふ、それ私よー。」
「一人ひとみさんって事はもう一人は?」
「それが二人ともひとみさんなんです。」
「何それ!?二人にお持ち帰りされるって夜どうするの?」
「それはもう私のテクニックに掛かれば一人も二人も変わらないわよ、凄かったわよー特にサントス。」
ハリウッド俳優の夜の事情にみんなで聞き耳を立てていると店の戸が開き「何やってんの?宏司あたし焼きそばお願い。」と入ってきたのはClubムーンのママ桜子だ。
恰幅のいい体型だがやはり顔立ちは綺麗で痩せたらもっと綺麗だろうと伺える。
きららとはお互い店を構える前からの付き合いらしく、今でも「宏司」「健夫」と下の名前で呼び合っているがそれの半分はお互い嫌みも入っている。
「ロバートとサントスのベッドの話しー。」
「ちょっとひとみ、お客さんのプライベートなんだから辞めなさい。」
「はーい、ママ。」
「なんだーせっかく聞けると思ったのにー。ママ私お茶漬けの梅。」
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