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再会
「久しぶり、私のこと覚えてる?」
僕の周りがどよめいた。それもそのはず。ふんぞり返る成功者たちを押しのけて、とびきりの美人が垢抜けない男の元へ駆け寄ってきたのだから。
三十路に合わせた中学の同窓会はとあるホテルのパーティールームを貸し切って開催された。大きな窓から見える中庭の桜は満開だ。高級腕時計を見せびらかすような幹事グループが考えそうなプラン。ずっと目を背けていたいきらびやかな空間で割と仲良かった友人と二人、ひっそり飲んでいたのに。彼女のお陰でいくつもの好奇の目が飛んでくる。
「あんな美人いたっけ」
「知り合いなのかな」
ヒソヒソ話が全部届く。普段ならうるさいと思うけど今は欠片でもヒントが欲しくて耳をかたむける。
「おい誰だよ。こんな美人……まさか元カノ?!」
すでに酒臭い友人の胸に「そんなわけないだろ」とエルボーする。
「わかった! お前が柄にもなくワンナイトしたっていうほら、確か四年前の――」
黙れって、とにらむ。友人の言葉に彼女は目を丸くしていた。
「このバカが大変失礼しました。えっと、すみませんがどちらさまですか?」
あーやっぱりか、と彼女は額を抑えるふりをする。
「私、トーコだよ。元気だった?」
ぱあっと華やぐ笑顔、ゆったり香るフレグランスは海を彷彿させる爽やかなもの。
「トーコって――」
瞬間、中学時代の想いがドカンと蘇った。
「とーじま、さん?」
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