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回想
「今日の写真送ってくれ」
絵文字もついていない友人からのメッセージに、言われたとおり写真だけぽんと送る。隠して持って行った携帯で僕は写真を撮らされたのだ。
受験を頑張りたいから意中の女子との写真がほしいと拝んでくる友人の下心を無下にできず渋々承諾した。男女別の行動が多いなか、バスの移動時間になんとか二人を同じフレームに入れることに成功したのだが。
「あとで面倒に巻き込まないでくれよ、っと」
追伸を送ったついでに開いてみれば友人の後ろの補助席に見知らぬ女子が写り込んでいた。
「後ろに写ってる女子だれだっけ」
バスには同じクラスしか乗っていないから友人からは呆れた返事がくるだろうと構えていた。だが返ってきたのは意外にも「俺もわかんねえ」だった。
次の日、学校に行くとすんなり解決した。写り込んでいたのは島島島子だったのだ。なんだ、と一瞬でもおばけの類いを疑った自分にほっと胸をなで下ろす。しかし家に帰って写真を見るとまた誰だか分からなくなる。さっきまで知ってたのにな、と思っても家では誰だか思い出せない。
「おはよう」
「あっ、とーじまさん」
そうだ、島島島子だ。こうして教室に行けばしっかり思い出す。
忘れては思い出し、忘れては思い出し。何度か繰り返すうちに、僕は自然と彼女を目で追うようになっていた。
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