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家に帰ると誰だか思い出せない、もやばいやつだし。皆お前を忘れてるぞ、もいじめっぽい。どう切り出しても変な話だ。
「あの」
それにしても彼女はいい香りがする。女子は皆そうなのだろうか。もしや、僕は恋しているとか。いいやそんなことはない。でも毎日……いやまさか。心で二人の僕が掛け合っている。
「あの!」
「えっ、ごめん。何だっけ?」
横を見ると彼女がいない。振り向けば数歩後ろの別れ道で立ち止まっていた。
「ここを左に曲がるんだけど。嫌じゃなきゃ送ってくれない?」
うち海の上なの、と続ける。心なしか頬が赤い。
「も、もちろん!」
思ってもみなかった誘いを二つ返事で受けた。
曲がると言った別れ道から見える海は【攫い波】が出るという言い伝えがある場所だった。美しい人に誘われるままに足を進めると波に攫われて消えてしまうという。
恐らく波が高いから気をつけろという意味なのだろうが、島島島子は女の子だ。怖くないのかと聞いてみると「気にしないわ」とにっこり笑った。
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