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宿題や受験、先生の癖など。ありきたりな話をしているうちに二人の時間が終わってしまった。
「橋?」
こんなところにあったっけ、と首をかしげたが堤防には青く塗られた橋がある。
「見えるの?」
見えるもなにもあるじゃないか、と指をさすと彼女は目を丸くしたまま「そう」と言った。
「ここまででいいわ」
霧の向こうから伸びてくる灯台に照らされて、彼女の輪郭からはみ出たふわふわの髪がきらめく。そのきらめきに気をとられていると彼女が近づいてきた。温かい。柔らかな感触が離れていく。キスをされた、と気付いたときには真っ赤な顔をした彼女が目の前にいた。じゃあ、とスカートを翻した後ろ姿も可憐なことはわかったけれど理解できなかった。
橋の向こうは霧が濃くてよく見えない。海の上に家があるなんてお金持ちなのだろうか。もしかして正確な家の場所を知られたくなかったのかもしれない。それにキス。心臓が鳴り止まない。噂が立ったらどうしようと冷や汗をかいたがしかし、自宅につく頃には誰をどこに送ったのか忘れていたのだ。
滑るように時は流れて、僕たちはそれっきりになってしまった。
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