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突然、すごい風が吹いて母さんのレイを巻き上げると、花びらを全部、撒き散らした。
風の中に「ありがとう、栄太郎」の声を聞いた気がする。
いつの間にか母さんはいなくて、俺の手にはアロハシャツから抜け出したみたいなハイビスカスが一輪、残っていた。
それは懐かしい母さんの匂いがして、それもいつの間にかふうっと消えた。
公園には相変わらず楽しそうなファミリーの声が響いている。
俺は、さっきまで母さんが座っていたベンチの座面にそっとさわってみた。それはほんのり木の温もりがした。
母さん、父さんやばあちゃんに会えるといいな。
見上げると、ヴァカンスにぴったりな雲ひとつない青空が広がっていた。
ー終ー
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