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小次郎は声を荒げた。
「……はい」
ヒートアップする小次郎は面倒臭い。武蔵はしぶしぶ返事をした。
「だったら、それなりの態度ってもんがあるでしょ?」
「えー?」
武蔵は「メンドクサイ」の感情をそのまま出して、尻上がりに声を上ずらせた。
「なんだよ! ウジウジすんなよ! なんとか言えーっ!」
小次郎のヒートアップが最高点に達した。
「武蔵! てか、謝れーっ!」
小次郎は人差し指をブンブン振った。武蔵をその人差し指で斬殺するが如くの勢いだった。そのあまりにも激しい小次郎のキレっぷりを見るに見かねてか、武蔵の乗ってきた小舟から誰かが飛び降りた。そして二人に向かって走ってきた。
「ちょい、ちょい、ちょーい!」
「なんだ?」
なんだこいつ、と小次郎は乱入者に目を奪われた。乱入者は加齢による運動不足が見て取れるコミカルな走り方で、二人の元にまっすぐ走ってきた。
「ちょい、ちょい、ちょいっと!」
手刀を細かく上下させ、丸っこくて背の低いおばちゃんが小次郎と武蔵の間に割って入った。
「え? なんですか?」
得体が知れなかったので、小次郎はビビって丁寧に話しかけた。
「エライすんません。なんか、もうバカ息子ですから堪忍してやってください」
おばちゃんが両手をこすり合わせ拝むように小次郎にペコペコ頭を下げた。
「え? だれ?」
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