★ねえ、覚えてる？★

『よく、ケガをして、心配かけさせられたわ』

『あぁ、そうだね』

一体

妻は、なんの話をしてるんだろう

俺たちに子供なんていないのに。

『ねぇ、あなた、サオリの結婚式の時の事、覚えてる？』

サオリなんて知らないし。

友達なのか？
親戚なのか？

『うーん、なんだったかな？』

『もう、あなたってば、ホントに、覚えてないの？』

『結婚式で、何があったかな？』

このまま

話をそらしたいものだ。

『サオリの結婚式の時、指輪交換する時に、
指輪を忘れて、式場の人が慌てたじゃない』

なんかの
ドラマの話なのか？

『あー、そんな事もあったかな』

『あの時は、司会者の機転で、うまく、切り抜けたから、良かったけど、ハラハラしたわね』

『あー、そうだったね』

『あなた、本当に、覚えてる？』

でたでた

覚えてて当然って

ユウコの頭の中のストーリーが

どこに、繋がっているのか

テレビなのか

映画なのか

俺に、そのストーリーが分かるわけがない

『覚えているよ』

ユウコは

もしかしたら

認知症になったのかもしれない。

色々な
記憶が

自分の人生のストーリーに

なっているのかもしれない。