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「鷹崎さんが飼うんじゃダメだったの?」
鷹崎の家庭は複雑で親との関係もあまり良いとは言えずだったから家に猫を置いてくるのが嫌だったらしい。
詳しいことは千秋も聞いていないけど、複雑な家庭だったとだけは聞いている。
「でもこの子は鷹崎さんにベッタリだよね~。」
どの写真も鷹崎が抱いていて甘えるように顔を摺り寄せる子猫の写真は可愛いの一言。
「黒は俺達にも懐いてはいたんだよ。でも鷹崎が来ると鷹崎の元を離れなかったんだ。」
ある時から写真には子猫は映っていないのに千秋は気が付いて・・
「黒ちゃんはどうしたの?」
心配そうに千秋が言うから相川は立ち上がって雑誌を持ってきた。
「何これ?」
なんでこの話の後に雑誌なのよ・・黒ちゃんはどうしたって話だよ。
まー見てみなよ。そう言って付箋がついているページを開くと。
見た事のある女性が抱いている猫。
「これ?まさか・・・若い花さんなの?」
今でも綺麗だけど、モデルか女優のような容姿で猫を抱いて映っている見たことある美女。
「そう。この頃はね、鷹崎は花さんと決められた日にしか会えなくて会った時に鷹崎は黒ちゃんを託したんだよ。」
花は初めての息子の頼みに快く応じて「黒ちゃん」を引き取って花の愛猫としての生活を送って幸せだったとこの写真を見てもわかる。
「鷹崎さんって優しいよね所々・・。」
「えー俺には鬼だよ鬼畜だよ。」
何処が優しいんだよって相川は言うけど相川も解っている。
鷹崎隼人は誰よりも情が深いから非情になる。
千秋はなんとなく解っている。
相川は天才的なITの技術を持っているが、本来経営や人との付き合いは人が良すぎて難しい。
鬼のような判断を鷹崎がヒール役をかって出てるから印象の良い社長で社風なんだと思う。
相川を成功に導き海叶の命を救って・・今度は彼がこの子猫のように安息の場所を手に入れる番だと千秋は思う。
そしてそれは千秋だけの思いではなく相川や海叶も同じだと高校生の頃の彼等と今の彼等は同じで・・
「男の子の仲間っていいわね~。」
と千秋は思う。
「うお!鷹崎から電話だ!あーなんか忘れてる?ね~千秋さーん。」
クスクスと笑いながら知りませんとキッチンに向かう千秋の後ろ姿にアタアタしながら電話に出る相川。
「嫌だ~マジで~鬼!鬼畜!」
なんて騒ぎながらこれからも・・男って可愛い。
たぶんそう思うのは私だけではないわよねと千秋は思うのだった。
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