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秘書課の毒蛇とマングース
加奈子は早朝に道場に通い、出勤することにした。
秘書室で教育係として、山本千秋がついてくれていた。
彼女はサバサバした性格で感じのいい女性だ。
「社長ってずっとああなんですか?」
社長室はパソコン数台が稼動している。
栄養ドリンクとコーヒーが主食かと言うくらいプログラム中は手だけがカチャカチャと高速で動いている。
「ああ、数日はああじゃないかな。」
いつもの事だと千秋は言うが、よくあれで社長が務まっていると思ってしまう。
「せっかくのイケメンなのに」
ボサボサの頭に着崩れたスーツ。
「ジャージでいるときもあるわよ。」
クスクス笑う千秋。
そんな会話をしていると千秋のスマホが振動した。
「イケメン社長は「お握り」所望ですって。」
特殊なアプリでラインのようなやり取りを秘書課はしている。
セキュリティの関係で社長の作ったアプリで、今回はそのシステムの強化したものをプログラムしているらしい。
焼きお握りをレンジで温めて千秋は指示された食事と書類を用意して社長室へ。
しかし、すぐに帰ってくると千秋は申し訳なさそうに書類を加奈子に手渡した。
「専務に決済してもらってだって。」
予定を確認してみたら、分刻みで会議が入っている。
お昼の少しの時間しか空き時間が無いような状態。
専務に取り合えずメッセージをアプリで送ってみた。
加奈子 「お疲れ様です。社長が決済を頼みたいと言っていますが?」
専務 「ノック無しでそっと入って持ってきて、会議してるから。」
加奈子 「承知いたしました。」
許可を得たので専務室に入ると中国語と思われる言葉で話しているようだった。書類をサイドテーブルに置いてそっと退室した。
「貴女何も言わずに退室は無いんじゃないの?」
事情もわからず騒ぐのは結城紗耶香だった。
「結城さん、大輔さんがまた怒りますよ。」
結城大輔と結城紗耶香は仲の悪い親戚だった。
結城紗耶香の父親は大輔の父親の兄にあたる。
「私は貴女の敵にはならないけど、私に噛み付いたら大輔さんはどうするかしら?」
紗耶香は大輔が苦手だ、専務狙いの彼女にしたらよく考えれば加奈子を敵に回すのは得策では無いのはわかるだろうに。
何かと絡んでくるから迷惑だし面倒だ。
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