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撮影当日にモデルの一人や二人がキャンセルしてくることはよくあるが、全員がキャンセルというのは花も経験したことがなかった。
「美鈴ちゃんはいいとして、あとの撮影どうするかよね。」
バタバタモデル事務所や芸能事務所に連絡するがモデルを探すが今日は無理だと軒並み断られる。急ではあるけど、待機しているモデルくらい本来いるはずなのにおかしいと花が考えていると美鈴と鷹崎がそろって到着したとスタッフが報告にきた。
「いいわ美鈴ちゃんと隼人を先に撮るわ。」
後のことは後で考えようと花は判断したが
何か裏があるかもと花は感じていた。
「花、モデルは心配するな少し遅くなってるが来るから。」
アランは自分の知り合いに頼んだから大丈夫だと花に不敵に笑って言ったから何か既に彼が動いてた事で自分の予感が正しいと確信した。
二人の用意が出来たと言うので花はスタジオへ向かった。
「ごきげんよう、花さん。」
そこには九条 美月が田崎まで連れて立っていた。
「何故貴女がここにいるの?」
過去に付き合いはあったが今はそうじゃない彼女の急な登場に戸惑いながらも花は聞いた。
「田崎の事務所の手違いでモデルがキャンセルになったとか旧知の私に連絡があって、モデルとして一緒に行ってくれないかって。」
田崎の顔色は悪い、花はすぐにこの女がモデルキャンセルの黒幕で息子を狙ってきている女狐だと判断した。
「田崎君も撮影で忙しいんじゃないの?ドラマたしか決まっていたわよね。」
花が何も知らない顔をして田崎に言うと彼は態度を決めかねたような返事しかしなかった。
「私がお願いしましたの、花さんがお困りだって聞いて。それに素人のOLなんて使えますの?ブランドを貶めるだけ?」
昔から嫌な子だったけど(騙されたことあるけど)息子の見る目は確かね花は昔息子に言われた言葉を思い出した。
「あの女は知恵のまわる馬鹿ですよ。」
その通りだわ。
勝手にスタッフに衣装を持って来るように指示しだした美月は身動き一つ取らないスタッフに憤った。
「はやくしなさいよ。」
苛立ちを隠そうともしないで騒ぐ彼女の後ろから、
「何故貴女が指示するのですか?モデルはもうすぐ来ますよ。」
貴女には用はないですよと言って出てきたのは鷹崎だった。
鷹崎が着ているのは光沢のある生地のブラックスーツでグレーベストを合わせたスタイルの衣装をキッチリ着こなし、髪は後ろに流して眼鏡が知的な印象だった。
「美鈴、綺麗ですね。」
彼は恥ずかしそうに下を向きながら出てきた美鈴の手を取ってエスコートした。
「アラン撮影必要ですか?」
鷹崎は急に何を言い出すんだと準備していたアランは「何故だ?」というと鷹崎はウットリとした目をしながら言った。
「誰にも見せたくないのですが・・。」
呆れたアランと花は「馬鹿言わないで、撮るわよ。」というから鷹崎は仕方がないと言ってアランの撮影に応じた。
「美鈴ちゃん凄いわね・・着こなしてるもの。」
手足が長く色が白い美鈴にはブルーが良く似合う。可愛いデザインでもセクシーなデザインでも着こなせるのはスタイルの良さからだと花は思う。
「私だってバレエをしてきたのだから姿勢もいいはずだし出来るわモデルくらい。」
だから早く衣装を持って来なさいよと騒ぐ美月に田崎は
「佐伯はモデルでもできるだろうけど、君は無理だよ。」
「何を言うのよ・・。」
「まず、身長が足りない。」
何を言うのよ身長が足りないですって!そう言おうとしたとき
「確かにたりんわ。あんた綺麗やないし。」
モデルを引き連れ入ってきたのは明だった。
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