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美月は苛立った声と態度で電話にでた。
まさか、怒り狂った祖父だとは思わずに
「お前は何をしている?」
「何も・・。」
「すぐに手を引け!いや・・謝罪したいと鷹崎に言え!どんな手を使っても謝罪しなければ九条グループが終わる。」
信じられない九条は安定していたはずだ・・成長はしなくても昔からの繋がりで姻戚関係の権力や財力のもつ名家の力も使えるはずなのにそうそう揺らぐはずはない。
そう美月は思い込んでいた、しかしそのグループの会長である祖父が謝罪という言葉を使っていることが信じられない。
美月は力の抜けたような声で「祖父が謝罪したいと言ってますわ。」そう鷹崎に聞こえるように言った。
鷹崎は場所と時間だけを言ってその場を去った。
鷹崎が指示した場所は都内のホテルの会議室だった。
そこに会長である兼続は美月の両親を伴いやってきた。
鷹崎や相川だけでなく、美鈴や明と一緒に花も同席していた。
「この度は孫の美月が申し訳ないことをした。」
九条兼続は謝罪しながらも状況を好転させて九条に有利な展開にもっていくことを考えていた。
今回の出来事は美月が単独で起こした不始末で九条は関係ないと言った。
「美月さんが指示して九条の力が動いたのは事実です、当社に盗聴器をしかけシステムをハッキングしこれだけでも敵対行為であるのは明白ですよね。」
口を開いたのは意外にも相川だった。
「相川社長ですかな、敵対するつもりは九条にはなかったのですよ。御社の専務に何年も恋煩う孫娘が鷹崎専務に近づきたいが為に間違った行動をしただけですよ。」
そうきましたか・・まだ足掻きますか。
そう思いながらも表情を変えず無言で聞いているだけの鷹崎を勝手に自分の提案を考えてると思い込んだ九条兼続は言葉を続けた。
「鷹崎専務、独身だと聞いていますが美月を受け入れてはくれませんかな?」
馬鹿な男だと相川は思った、美鈴を横目でみると目を見開いて鷹崎を見ている。
鷹崎は冷たい視線を向けながら
「僕が?ありえません。」完全拒否し美月を見ることすらしない。
それならこれならどうだと九条は美鈴をやり玉に挙げてきた。
「今の恋人は佐伯美鈴さんでしたかな、確か息子の嫁のバレエ教室で活躍されていたと聞いていますが、バレエを辞め大学の時にご両親が事件に巻き込まれ彼女自身が男に攫われてから男性恐怖症だとか・・そんな。」
鷹崎は無表情ではあったが明らかに纏う空気が変わり突き刺すような殺気を放っていた、それ以上は言わせないと言わんばかりに。
「なんですか?」
言えるものなら言ってみろと言わんばかりだった。
「鷹崎これ以上は美鈴ちゃんが・・。」
相川は美鈴が傷つくと言いかけたが、美鈴は手を明に握って貰って毅然と立っていた。
「男に攫われたということは何かあったのでしょうな、可哀想に男性恐怖症になるほどの何かが・・。」
ニヤリと嫌な笑顔で九条は凌辱されたような女を妻にする気はないだろうと遠回しに言いたいようだった。
「ああ、そのことですか。彼女の男性恐怖症の発端はその事件では無い貴方の孫である美月さんが仕組んだ田崎からの暴言が原因です。」
鷹崎がそう言うと、相川は用意してたパソコンで田崎が証言している音声と動画を流した。
素直に謝罪するようならいいが、美鈴を攻撃してくるという鷹崎の推測は当たっていた。
美鈴を傷つけないように、細心の注意と準備をしている。
「言い掛かりよ!ただノッポの案山子みたいな女と田崎は言っただけでしょ?それだけで恐怖症にはならないわよ。」
では田崎を唆したことは認めますねと鷹崎が言ったと同時に赤毛の女性が入ってきた。
「なるわよ、最初の起因になるわ。」
その女性は精神カウンセラーで精神科の医師だと名乗った。
「キャサリン・間宮よ。」
誰?と美鈴が不安な顔をして見てるのに気が付いた明が「海叶の奥さん」
というから黙って状況を見ることにした。
「いや、そうだとしてもだ・・男性恐怖症や他にも病のある女を相手にして君は満足なのか?」
キャサリンは美鈴にこっちに来てと鷹崎の隣に来るように言った。
彼女はその指示に従って鷹崎の隣に立つと彼は美鈴の手をそっと掴むと手の甲にキスをした。
「彼女が男性恐怖症だとして、鷹崎には拒否反応が出ていないわ。だからその恐怖症は軽いか改善されているということだわ。」
鷹崎は自分の隣の席に美鈴を座らせて手を繋いだまま九条兼続に対峙した。
「この通りです、貴方に心配していただくことはないですよ。ああ、彼女が攫われた時に助け出したのは僕ですから、状況は全て把握してます。」
美鈴が鷹崎を見ると彼は「大丈夫だ」と小声で言った。
美鈴は静かに頷いた。
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