真実と愛

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真実と愛

 「久しぶりだね、美鈴さん。」 バーのカウンターで人好きする笑顔で海叶が三人を出迎えた。 「海叶さん体はもう大丈夫なのですよね?」 助けてくれたお礼を言わないとって思っていたのに顔を見たら無事に生きていてくれたことが嬉しくてもう大丈夫なのかと先に聞いてしまった。 クスっと笑いながらもう大丈夫だからここにいるんだよと海叶は言った。 「もう会ってるみたいだし、なんだけど紹介するよ。妻のキャサリン医者なんだ。」 「もう仲良しよ。」 キャサリンはそうよねと同意を美鈴に求めながら既にカウンターに座っていた。 「感動の再会はいいとして時間がないからさあの男が来る前に話ておかないとあかんやろ。」 明はそう言うと美鈴に向き合った。 「そうだね、鷹崎がゆっくり来たらいいけど」 クスクス笑いながら海叶もそうだねと同意して明は自分と鷹崎と海叶との関係を美鈴に説明しだした。 「5年前に美鈴の御両親佐伯夫妻が事故で亡くなって海叶さんが病院で美鈴を見つけて名刺を渡したのは偶然やねん。海叶さんは入院する少し前から臓器の移植が生命維持に必要やったけど、日本ではなかなか間に合わな い時間がなかったんや。うちと王との関係は美鈴も知ってるやろうけどそこも偶然、鷹崎と王は敵同士から仲良しになっててな、鷹崎は自分の親友海叶の移植の為に王と契約したんや。3年間アメリカで王の会社のコンサルタントとして働くことやなそれはドナーが決まった時点で始まる契約やったみたいやわ。その契約は佐伯夫妻の事故の前の契約でなすでにドナーや医師なんかの手配も進んでいたんや。海叶を通じて鷹崎から聞いたと思うけど初恋の美鈴と彼は再会して本来ならそこから始まったかもしれんけど、鷹崎にも事情があったし、美鈴も加奈子ちゃんの事があったやろだから彼は何故か5年って決めてライトコーポレーションの専務と王のコンサルと 同時にやりよってん。それぞれ成果を上げて誰にも文句は言われんような結果と成果をだして、ライトに戻ったんや。」 海叶は明が話す間黙って聞いていたが会話が切れたときに海叶は言った。 「俺は、ギリギリだったみたいなんだ死ぬのは覚悟していたんだよ。俺は諦めていたのに鷹崎は諦めていなくてね、身売りするようなことしたんだ、俺は手術が終わって回復したときにそれを聞いて勝手な事をするなって鷹崎に怒鳴ったよ。でもさあいつ何て言ったと思う?」 何と言ったのですか?って美鈴が聞くと隣の明は「まぁ聞いたらいいわ」と笑ってた。 「五年後に力をつけて美鈴を迎えに行く為にしたことだから気にせず生きろって、美鈴が泣くような事だけはするなって。」 美鈴の目から涙があふれてくる・・ハンカチを渡しながら泣かないのと言うのはキャサリンだった。 「鷹崎はな5年間美鈴に会えない覚悟でいたんよ、そんな彼のことは親友の私からみても本気で愛してるのは見ていてわかったから色々状況の報告はしてあげたんよ。何年も前に恋した女にやっと会えてヒーロー宜しく救い出して心配しながら渡米したんや。相川社長や私に頭まで下げてな・・確かに鷹崎は仕事では策士やでも美鈴に対してだけは一途っていうかさ。」 キャサリンが隣で「あれは紳士的なストーカーやな。」って言うから明も海叶もそれそのままだと笑いながら同意していた。 「私が攫われて売られそうになった話は知ってます。その時に助けてくれた人は鷹崎さん?」 「王が場所を特定して連絡したら自分で現場に乗り込んだんよ。命の危険もあったのにさ、王の部下が言うには美鈴を自分のジャケットで包んで抱き上げて出てきたらしいわ。」 美鈴は驚きよりも「やっぱり」という感じだった。記憶は途切れ途切れでも香だけは記憶に鮮明に残っていて、同じ香が鷹崎からした。 同じトワレを使っているだけかもしれないと思ったけど、彼に対しては安心感を感じていた。 今となれば5年前に「迎えにいく。」と言ってくれた人は鷹崎だと聞いても納得しかない。 でも何故会った時に言ってくれなかったのか・・。 その疑問を海叶が教えてくれた。 「鷹崎隼人という男は君を手に入れる準備には余念がないけど、いざ君を前にすると言い出せなかったんだろうよ。君があの事件を 思い出すのを良しとしなかったんだと思うんだ。」 そんなに想ってくれていて、今でも無理強いは一切しないただいつも思いやってくれて守って待ってくれる。 自分が思う以上の深い愛がそこにあったんだと思うとただ今すぐ彼に会いたいって思った。
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