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「黒ちゃんがノワールになった時」スター感謝
花はホテルのレストランの個室でソワソワしていた。
多くても半年に一度しか会えない息子と会える日は毎回まるで恋人に会う前のようにドキドキする。
会うたびに成長する我が子「お母さん」とはもう呼んでくれないけどそれでも会える時は嬉しい。
グラスに注がれた水を一口飲んで冷静を保つ。
マスコミにも注目されデザイナーとしても成功した、その代償があまりにも大きいが後悔はない息子とは住めなくなったけど会えないわけではない。
そんなことを考えていると案内されて息子が個室に入ってきた
「また身長伸びたんじゃない?」
180をこの前も超えていたけどまた伸びているこの年頃の半年はこんなにも身長が伸びるものなのか?
「ええ、花さんはお元気そうですね。」
「まあね、大学は決めたの?」
「決められていますからね。」
表情を変えないのは何時もの事だけど・・決められた人生を押し付けられている息子が不憫だが何もしてあげれない。
鷹崎家は優秀な息子を決して手放さない今は一緒にいれる貴重な時間だからと気持ちを花は引き上げる。
成長著しい息子を改めてみると彼が手に何か持っていることに気が付いた「あら?」手ぶらが常の息子がバスケットを持っている。
「隼人それは?」
「ああ、家に置いておくと心配ですから。」
そんなに大事な物が執着しない息子が??
ニャ~。
小さな鳴き声がそのバスケットの中から聞こえてきた微かになけど。
「黒?大丈夫ですよ・・。」
声をかける息子。
「猫?声からするとまだ小さいの?」
「ええ、海叶が助けた子猫ですが飼い主を募集していまして、今は僕が預かっています。」
花はバスケットを開けていいかと聞くと息子はどうぞと言ってそ~っと開ける。
中に真っ黒で目の青い子猫が大人しく座っていた。
「飼い主を募集はまだしてるの?」
つい聞いてしまったの・・息子を見上げる子猫はどうやら彼に懐いているようで大人しくしていたから。
息子が抱き上げるとゴロゴロ喉を鳴らしてすり寄る姿は愛らしく、表情を変えない息子だけど優しく抱き上げている所を見ると愛情をもって接しているのが伺えた。
「ええ、出来るだけ大事にしてくれる方を探しているとなかなか見つからないんです。」
「私が飼っては駄目かしら?猫は好きだし。」
「そう言ってますがどうしますか黒?」
猫に真顔で問いかける息子、小首を傾げる子猫。
私は手をそっと子猫に差し出したら警戒もせずにその手にすり寄ってきた。
「花さんは責任もって飼えるなら僕はいいですし黒も嫌いではなさそうですから。」
「黒~ノワールでもいいわね。うちは多国籍だからね。」
ニャ~と鳴いてから花が抱き上げても大人しくしている。
「ではノワールをよろしくお願いします。」
「ええ。わかったわ。」
この日から黒はノワールになってうちの事務所のアイドルになった。
大人しく人懐こくいつも一緒だった。
たまに雑誌に一緒に撮影もしたりしたし旅行にも一緒にいったりでも定位置は私の足元。
ノワールは男の子だったようでよく家出しては帰ってきたりもした。
ある日ノワールが一匹の子猫を連れて帰ってきて半年後にノワールは帰って来なくなった。
寿命だったのだろうか。
「ルイはノワールとそっくりよね。」
ノワールは自分とソックリの子猫を連れてきてまるで自分がいなくても落ち込まないでというように・・耳の端だけ白い毛があるルイは女の子で今も事務所にいる。
「ルイ~貴女のお父さんが大好きだった隼人がね可愛い子を連れて来たの会わせてあげたいわ。」
私がそう言うとルイは足元に絡みつくように甘えながらまるで私も楽しみだわと言ってるように花は感じた。
最近「お母さん」と言ってくれるようになった息子。
花は一枚の写真の前に花を飾りながらこれからの未来に希望を抱いていた。
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