1110人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
海叶は赤毛の姫に癒された
幼い頃から体は強い方では無く体育は毎回見学だったが特に嫌な思いはしなかったように思う。
幼稚園の頃から俺には仲のいい親友が二人いるが一人はパソコン馬鹿で一日中パソコンをいじっては何かを作っていてたまにその作った物が役にたつが余計な物も作ることもある。
もう一人は恐ろしく頭がよく一度見たり聞いたりしたことは記憶しているし、授業中に教科書を持ってきてはいるが違う本を読んでいるなのに先生に指名されて答えられなかったことは無い。
一人は天真爛漫で表情豊かな男だがもう一人は表情をあまり変えない感情をほぼ出さないんだ。
出会った頃はまだ笑ったり泣いたりしていたが・・小学校になるくらいから表情が消えた。
でも俺は知っている誰よりも心優しく情の深い男だと言う事を鷹崎隼人はそういう奴だ。
俺が高校の頃から心臓の病気は徐々に悪化してきていた何か生きていた証が欲しいと思った俺は生徒会に立候補した。
無謀だと相川はギャアギャア言ったが・・鷹崎は何も言わなかったが自分も副会長に立候補していた。
「海叶は表に立っていればいいです学校の顔ですから、僕は事務を担当しますから。」
鷹崎はそう言って会議や交渉などを一手に引き受け事務処理もサポートどころかほぼ全て請け負ってくれていた。
その頃にペースメーカーの手術をうけなんとか命を繋いでる状態だった。
「心臓移植のリストに載せていますが後五年以内に順番とドナーが現われる事を願うばかりです。」
告知を知りたいという俺の願いから医師の告知は残酷な現実を告げた。
「五年もあるのか大学には行けるな。」
大学生になってまだあの二人と一緒にいたかったし何かをしたかった。
高校の時は縛りがあるから出来なかったが大学に入学してすぐに万相談事の掲示板を作った。
猫がいなくなったとか・・財布を落としたとか。
どうでもいい内容の書き込みもあったが、深刻なものは鷹崎や相川に相談して解決したりしたんだ。
世の中の理不尽や困っている人を助けることで生きている実感を得たかったんだと思う。
「俺は記者になりたい。」
なんて言い出したのもこの頃だった。
大学を卒業する頃にはかなり体は辛くなり入退院を繰り返す日々だったが鷹崎は弁護士にこれには色々あったみたいだが・・・
相川はエンジニアになった。
俺は掲示板を維持しながら記者になる夢はそのままでバーを経営しながら闘病生活をしていた。
そんな時に偶然出会ったのが佐伯夫妻の事故の連絡で駆け付けた娘の美鈴ちゃんだった。
俺にはもう時間は残されていないから解決できるか微妙だったがそれでも助けたいと思ったし最後だと思って名刺を渡したんだ。
俺はこの頃すでに諦めていたんだ!
「予定よりかなり長く持ってくれたよな・・。」
五年と言われた心臓はなんとか八年持っていた奇跡だと言われたがストレスフリーだったからかも知れない。好きな事を好きなように出来たからだと俺は思う。
俺の親父も・・みんな諦めていたただ一人諦めていない奴がいると俺は知らなかった。
「死ぬな!海叶!絶対死ぬな!」
薄い意識の中で叫ぶ声・・お前そんなに感情出す奴だったか?
「諦めるな!」
意識が遠のく・・埃だらけのスーツ姿で何故か走っている鷹崎がいる。
「隼人?」
掠れた声で名前を呼べば頷いてそうだと伝えてきた。俺が次に覚醒した時に見たのは白い天井で・・病院だとはわかるが体のあちこちに管が繋がれていて機械が繋げられていた。
最初のコメントを投稿しよう!