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体が重く動かないが目を開ける。
「気が付いた?ドクター呼んでくるわね。」
日本語じゃない?英語か・・
まだ頭がハッキリしないのに英語か・・という事はここは何処だ?
微睡んでいると駆け付けてきた医師は親父と同じくらいの年齢の男性だった。
「君は運がいいね、君の友人は手術中ずっといたよ。命に別状がないと言うまでね。」
友人?鷹崎か?
彼はアメリカの心臓外科医の権威の一人でDrクラウスだった。何度か危ない場面もあったが手術は成功し術後も安定していたが中々意識が戻らなかったがやっと戻ったと言う事だった。
「すぐには動けないだろう。回復したら彼も来るだろう。」
そう言って彼は帰ったが俺にはいくつもの疑問があった。
アメリカで手術となれば臆の金が必要なはずだった流石に今の俺にも鷹崎にも難しいはずだ。
「痛って~。」
動くことは出来ないか。
ただ聞きたい事を聞いて答えられそうな人には会えずに回復を待った。
そんな時に訪問してきた人物から聞いた内容は到底受け入れられないものだった。
「私は王と鷹崎の使いの白宇航(パイユーハン)通称は白です。」
アッシュブロンドというか白い髪をキッチリと結び切れ長の目で薄い唇の男だった。威圧感はないが隙が無い感じの男で名前からも中国系の人間だとすぐに分かった。
「王・・もしかして?王グループの?」
かなり大きなグループでシンジケートでもあるはずだ。
「はい、王立人様は私の主です。鷹崎隼人は主と契約し貴方の命と引き換えに三年は主の片腕として動く事になってます。ああ、五年でしたか。」
「どういう事です?」
「彼にも事情があるようですがライトコーポレーションへの支援と貴方を救う事を条件に五年ほど王の元で仕事をすると言う事です。」
なるほど・・なんて言えるかよ!
あいつ弁護士事務所を辞めたとは聞いていたが弁護士を辞めたのか?
俺を助ける為に?
自分を売るような真似をしやがって・・・・。
フツフツと怒りがこみ上げる「有難う」なんて言うと思ったのかあいつは!
馬鹿じゃないのか?
「鷹崎はこちらに当分顔を出せないかもしれないので私が・・。」
「どういう事だ?」
「かなりの激務だと言う事です、正直あれほどとは思いませんでした。私は貴方が意識を取り戻し回復に向かっているという事をこの目で確かめ主と鷹崎に報告する義務があります。ここで失礼します。」
事務的な話し方と表情は柔らかいが油断のならない男だ。
男が帰ってから俺の感情は荒れた!
親友の時間を・・身売りさせたようなもんだと俺は思った。
何の相談もなく勝手に決めて・・顔も出せないだと!
「何なんだ!あいつは・・。」
そう独り言を言っていた時に赤毛の女性が入ってきた。
年齢は俺より少し若いのか?
「ああ、そんなに腹立たしいなら早く動けるようになって殴りに行けばいいじゃない。」
英語で軽くそんな言葉を言った。
「簡単に言うね・・。」
簡単じゃない、命があるんだから元気になれば殴ればいいのよ!
女性らしからぬ言葉につい笑ってしまった。
「私はキャサリン=クラウスよ貴方の主治医の娘で精神科医ね。」
「俺は間宮 海叶だよ。」
カルテをヒラヒラさせながら「知ってるわ。」と言ったそれが彼女との出会いだった。
数日に一度病室を訪れては会話をして帰る。
日本語を勉強中だと言って関西弁を話し出すような子で何故関西弁なのかと聞けば最近友達になった子が関西弁で教わったらこうなったと言う。やたら甘いケーキを持ってきて日本語を教えろというから教えたりしていたが、彼女は日本のアニメが好きらしくアニメを語りだすと止まらない。
親父に漫画やDVDを送ってもらったものを見せると大喜びするような無邪気さがいつの間にか救いになっていた。
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