1110人が本棚に入れています
本棚に追加
鷹崎専務は待て!が出来ない
「契約書の翻訳をお願いできるかしら?」
営業企画課の美鈴にそう指示したのは、秘書課の結城沙耶香と比較的なかの良い町田 春香で美鈴より二歳年上で何かと問題を起こすが役員の一部と仲が良いことからチーフの椅子に座っている。
英語で書かれた契約書を翻訳は美鈴には難しくはないまた逆も、しかし違和感を美鈴は感じていた。
読み進めてすぐに解ったのは、未完成な契約書であること。
「これ、未完成な契約書みたいですが?」
何が未完成かを町田に美鈴は説明したが、町田は解っていない。
「貴女完成させて翻訳できる?」
美鈴は法律にも詳しく、いくつかの箇所の訂正で完成させることはできる。
「出来ますが、これいつまでですか?」
美鈴はいくつかを確認しながら契約書を仕上げてから翻訳する作業にはいった。
「美鈴さん、やばくないですか?」
井川 勇気は後輩にあたり加奈子より一歳年上で可愛い弟という感じで子犬ように美鈴によく懐いていた。
「うん。これかなり大きな契約の契約書なのよ。こんな大きな契約なら話題に上がるはずなのに、上がらないとなると専務の仕事かな?」
しかし専務は弁護士の資格を持っているはずで、こんなミスのある契約書を翻訳させないだろうことは推察できる。
「美鈴さん、さっき秘書課の結城さんが来てましたからそこじゃないですか?」
大輔君の親戚の子か。
あまりいい話は聞かないしなかなかの肉食女子と聞いている。
鷹崎専務の秘書を狙っていたのに加奈子が秘書に抜擢されて気に入らないのはわかる。
加奈子のディスクから勝手に持ち出して、加奈子を陥れる為に依頼させたとか?どちらにせよ完璧に仕上げてしまうに限ると美鈴は判断した。
明日の朝までとなると残業は確実だったりする。
早速契約書と内容をみて、間違いを訂正していく。
「これ、素人が作った契約書?」
仕事を依頼してきた町田は定時に帰宅した。
「美鈴さん手伝うことありますか?」
井川は美鈴だけを残して帰るのをためらった。
分厚い契約書には商品の細かい仕様が書かれていてそれの翻訳も必要だったりしている。
「もうすぐ終わるから大丈夫だよ。帰宅していいよ。」
美鈴はPCの画面から目を離さずに帰宅するように促した。
「すいません。お先です。」
加奈子には残業だとラインしてある。
出来上がったときは、時計は10時をまわっていた。
「ああ、こんな時間。」
終電ギリギリか間に合わないかの時間だった。
チーフの席に置いて帰るには契約書だけに問題になるような気もする。
持ち帰るのも怖い。
どうしたものかと考えていると、耳に心地よい声で
「佐伯さん?」
振り返ると170㎝以上ある美鈴よりさらに15㎝は高い身長のスーツの男性が立っていた。
最初のコメントを投稿しよう!