海叶は赤毛の姫に癒された

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「海叶って記者になりたかったんやな。」 キャサリンと話すようになり美鈴ちゃんの親友明の存在も知るようになった頃だったか・・さすがに今から体力的には無理だとはわかっているけど夢だった。 「私な西海岸でカウンセラーもしてるんやけど芸能人ってのかモデルや女優さんとかも患者にいるんだけど事務所辞めてる子沢山いるし有名な子でも事務所辞めてるとか自分でやってる子もいるんよ、そこでな海叶はエージェントするつもりない?」 気候もいいし来ないかという誘いは魅力的でやったことのない仕事もまた面白そうで・・ 「面白そうだね西海岸。」 俺はキャサリンの顧客に受けが良かったのか仕事は意外と上手くいった。契約書の類はいつも用意されていて目を通すが不備もなかった。 今思えばそれは鷹崎が仕事の合間に作ってくれていたのだろう。 契約書やしかも英語で訴訟大国のアメリカの契約書は日本の物と違っていくつも細かい契約書だったりするこんなのは弁護士でないと無理だし英会話程度の英語力ではどうにもならないが、ビジネス英語はキャサリンが鬼の特訓をしてくれた。 鷹崎は今だ顔を出さないし連絡もないが明と話すようになって美鈴ちゃんと鷹崎の関係もこの時間が必要だと言う事は理解できた。 俺が落ち着いてから全てを聞いたが鷹崎の決断力と周到さには幼い頃から知っているがここまでだとは思わなかった。 明と美鈴ちゃんの関係も驚くばかりで明と王の関係も・・偶然という言葉があるが必然だったのかと思えるようになった頃ふと俺は気が付いた。 主治医の娘で騒がしい時もあるがアニメ好きの底抜けに明るい赤毛の女神は意外に意地悪だったが無邪気で可愛いと思えるようになった。 免疫抑制剤を飲んでいるから10年生存率を考えると二の足を踏む彼女への想い。 半年ほどは仕事のパートナーの位置にいてある日キャサリンの元彼が現れた時に「獲られたくない。」初めてのそんな感情に悩んだ。 赤い髪も茶色の瞳も全てが欲しいなんて・・ 一目惚れではないがいつのまにか愛していたから・・ただ何もせずに他の男の物になるなんて嫌だ。 「海叶元気そうでなによりですね。」 アメリカに来てからだから二年振りになるのか鷹崎が見計らったように来た。 「元気だよお陰様で!あまりに時間がたって怒る気も失くしたよ。」 「そうですか、すぐに会いにくるつもりだったのですがすいません。」 あやまる必要なんかないのに鷹崎は謝る・・そして親友を失いたく無かっただけの行動でしたなんて言うような奴だ。 「お前こそやっと会えた憧れの君は助けて放置していたら他の男にとられるぞ。」 そう俺が言うと嫌な事を言いますね手は出来るだけ打ってます。 と返答がくるからそうだよな~と納得してしまう。 美鈴ちゃんの親友の明と相川に監視いや見張りを頼んでいるのだからそれでもキャサリンから少し聞いたが彼女の病は重くもないが軽くもないと聞いている。 「海叶、これは僕の考えですよ。命というのは限りがあるでしょう? 余命を宣告された経験がある海叶には愚問ですが佐伯夫妻のように明日もまだあると思っていた人が亡くなる事もあります。病気で あれなんであれ命の期限は誰でもあるのです。見えてるか見えないかで僕は5年で一生彼女の側にいる為の力を養おうと思っています。 愛する人と出会えた奇跡を何もせず逃すより全てを曝け出して手を伸ばしてみてはどうですか?」 鷹崎の言葉は俺の背中を押した‥次の日にはサイズも解らず指輪を買いに行ってキャサリンにプロポーズしたんだ。 「君が好きだ、俺の命は短いかもしれないでも生きている限り一緒にいたいし俺が力尽きた時側にいて欲しい唯一の人が君なんだ。 付き合って欲しいと言いたいが時間がないかもしれないから結婚してほしい。」 キャサリンは「おそ~い。待ってたのよねでも交際からでなく結婚は予想外だったけどいいわ、側にいるわ。」 指輪のサイズは合うわけもなく大きすぎてそれもまたキャサリンは笑いながら「海叶らしいわ~。」と言う。 キャサリンの父親は一度反対したが鷹崎が説得してくれたのかどうなのかは解らないが渋々了解してくれた。 友人を招いてささやかな結婚式をして夫婦になったわけだが・・・ ある日、日本に行きたいから日本で仕事すると言い出して日本に一緒に帰国した。 キャサリンは日本で精神カウンセラーとして働き俺はエージェントと情報屋をやっている。 最近は明と美鈴がキャサリンと意気投合して一緒にいることが多い。 もし俺に何かあってもこの二人がキャサリンを支えてくれると思えば今を大事に楽しむことができる。 でも簡単にこの手を離すつもりもないが・・ 白く柔らかいキャサリンの手を握りながら赤い髪を撫でる。目を細めて気持ちよさそうにする彼女との時間を一秒でも長くと毎日思う。 穏やかな風が心地よく静かな休日の一日だった。
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