暗躍するのは・・

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「話して下さい。」 全てを知っているから覚悟して嘘なく話せ、少しでも嘘があれば解っているだろうと言葉では言わないところに恐怖を感じる諏訪は全てを話すことした。 「兄が会社を父から継いで業務提携を見直したいと言ってきたんです。ライトコーポレーションとの提携は会社の命綱になっているのに。」 諏訪産業はマンション管理事業と新しく家具の輸入事業を運営している。 その新しい家具の輸入事業にはライトコーポレーションとの業務提携を条件にイタリア家具や北欧家具を仕入れて販売とライトコーポレーションの不動産事 業の家具付きマンションに売買契約をしていた。 諏訪産業には新規事業の際には鷹崎の別会社が出資している。 「あの契約書は業務提携の一部を双方の合意で変更というものだったね。あと家具の素材の一部の変更の仕様だね。」 鷹崎は相川が書いた契約書の原本が諏訪が用意したものだと理解した。 「相川社長。もう少し契約書の勉強してくださいね。諏訪君もです。」 「契約書は苦手だよ。鷹崎専務がいないと無理~。」 ギロッと鷹崎は相川を睨んでみるが、諦めたように 「知ってましたけどね、今回は少し僕が調査した内容がかなり気になったので罠をしかけてみたんです。諏訪君が何処まで知っているのかが解らなかったですからね。」 鷹崎は調査結果を諏訪に差し出した。  諏訪の兄がカジノで借金を作ってその借金の穴埋めに会社のお金を使いこみそれでも足らないときは誘われるまま闇金から資金調達していたという内容だった。 一部記憶が欠損していることから、薬を使われた可能性があるということ。 「申し訳ないですが、本日敵対的買収で諏訪産業は私が手に入れました。お兄さんは病院へ搬送して治療します。諏訪産業に出向していただけますか?」 鷹崎は自己資金を動かして諏訪産業を救った形になる。 「専務は何故そこまでしてくれたのですか?」 諏訪は今のライトコーポレーションであれば諏訪産業を切り捨てて別の会社と業務提携も可能だと考える。 「いや、僕が知りたい情報があったのと資金の回収の為ですよ。」 「情報ですか?そんな大きな情報はなかったように思いましたが?」 諏訪には理解できなかった 「ありましたよ、僕の大事な人を攫った男が関与していましたからね、逃げるのが上手な男でねなかなか捕まえられなかったんです。」 捕まえたということだろうか? 諏訪は鷹崎が追いかけてる男が何をしたのか気になった。 「深い話は聞かないでください。知らない方がいいですから諏訪君のお兄さん の娘さんが同じように攫われて監禁されていたようです。すでに僕の友人が助けたようだから安心してくださいね。」 鷹崎という男に底知れぬ恐ろしさを諏訪は感じ取っていた。 恐ろしくキレる頭脳と行動力だけでない大きな力を本人が持っているのかまたは力をもつ仲間がいるのか。 「あの男が関与していた?」 コーヒーを持ってきた加奈子はつい声を出してしまっていた。 「佐伯さん立ち聞きはよくないですね、コーヒーを置いたら座りなさい。」 加奈子にソファーに座るように促した。 「諏訪君は佐伯さんもお姉さんもご存じですよね。」 鷹崎の問いに 「ええ知っています。佐伯さんは今年入社でしたから深くは知りませんがお姉さんの美鈴さんは一見目立たないですが、仕事が出来る方ですよね。」 諏訪は長身の営業企画課の女性を思い描いていた。 黒髪を束ねて黒縁の眼鏡をかけて目立たないがよく見ると手足が長く高身長であまり飲み会などの付き合いには参加はしない大人しい女性。 「そうです、彼女が五年前に被害にあっています。しかも両親もおそらく男の指示で殺害されたと思われます。彼女はそのことを知りませんが佐伯さんには話しています。」 加奈子は真っ直ぐに諏訪を見て言った。 「姉は本来美人で眼鏡も伊達眼鏡ですしね。地味で目立たないのは姉が目立つのを怖がっているのと攫われたことで男性恐怖症だからです。」 大輔や相川社長は怖くないらしいが、他の男性には恐怖を感じるらしく最近はやっと後輩の井川を受け入れたようだった。 「そんなことが。」 信じられないという顔をしている諏訪に鷹崎は 「ああ、彼女の美しさは貴方は知らなくてもいいですが。」 と付け加えた。 「お前さあ~。」 呆れた声で言うと呆れた顔で鷹崎をみる相川は 「俺も知っていたよ。この会社がここまで大きくなったのは鷹崎が彼女を守る為と佐伯夫妻を事故死のように見せかけて殺害した男を捕まえることだからね。」 相川もまた真剣だった。 女一人の為にここまでのことをしてのける鷹崎という男。 諏訪はこの男だけは敵に回してはいけないと思った。 恐ろしく周到で冷酷な狙った獲物を逃さないような猛禽類のような男だと感じた。 「ライトコーポレーションに籍をおいたままで構いませんからお願いしますね。」 「承知しました。」 諏訪は気を引き締めて返事をした。
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