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「沙耶香は、佐伯姉妹が羨ましかったのだと思います。姉妹が仲良くお互いが
大事で昔から一人っ子の沙耶香は道場に遊びに来ていましたが、親父は沙耶香の父親とは確執があって、沙耶香には係わらないようにしていた。」
姉妹は特に美鈴は沙耶香を遊びに誘っていたが、いつも嫌味を言ったりして仲良く遊べなかった。
「君にも執着していたようだけど?」
「俺は沙耶香が嫌いでした。裏で佐伯姉妹を貶めることばかりして間違った方向で出し抜くことばかりで叔父と同じなんです。」
今でも変わらないという大輔の見解は鷹崎も同感だった。
「解雇にはしないが、彼女は秘書から総務に移動になるよ。それと君の叔父だが、社会的制裁を受けてもらうよ。」
鷹崎は不敵に笑った。
「君は全てを彼女達に話す必要はないんだよ。俺も話さない墓場までもって行く。彼女が大事であればなおさらだよ。」
話せば楽になると思っていた、覚悟を決めて彼女を守れと言われたように思える。
「鷹崎は自分の親でも容赦しないよ。」
マスターが新しいお酒を注ぎながら言った。
「鷹崎検事が検事を辞職して、弁護士になった裏には鷹崎君の正義があったからだよ。」
自分の親でも追い詰める、味方にすれば強いが敵に回したら終わりだと大輔は思った。
「マスター。海叶がメールしたけれど返信がないと言っていたけど?」
「ああ、PCは面倒だから見てないんだよ。」
「珍しい酒を手に入れたから送るって。」
マスターは嬉しそうに笑った。
「ああ、マスターは海叶の親父なんだよ。この店は海叶が経営していた店だったから俺が買い取って親父さんに任せてるんだ。」
とことん面倒を見る鷹崎という男は懐がでかい。
そんな男が将来義兄になると思うと大輔は嬉しく思った。
「マスターまた来ていいですか?」
大輔は何故か涙が出そうになるのをこらえて、赤い目でマスターに聞いた。
「いつでも来たらいい。」
マスターは優しい目で答えてくれた。
その日はタクシーで帰ってきたと親父が言っていた。
朝の稽古はきつかったし、加奈子には酒臭いと怒られたが気分は悪くなかった。
数日後に叔父の不正が大々的に報道されて、叔父が勤務していた製薬会社の株は暴落した。
その会社を買収したのは王グループだった。
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