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美鈴が倒れてザワザワと周囲が騒がしいなか、息子が青い顔をして彼女を
控室に運ぶのを花は唖然とした顔で見ていた。
相川は医師に電話して直接来るように指示している。
可愛い女の子が「お姉ちゃん」と泣きながら救急車はダメだと言っている。
「花さん、今日はここまででお願いします。」
電話を終えた相川に声をかけられて自分が呆然としていたことに気が付いた。
「ええ。どうして?」
花は撮影中止をスタッフに指示した。
「彼女はPTSDです。耳元で彼が何かを囁いたことが原因だと思います。妹の加奈子ちゃんもついてますから大丈夫だとは思います。」
相川は普段は使わない敬語で答えた。
「隼人はそれを知っていたの?」
女性には丁寧だがそっけない息子が顔色を変えて大事そうに抱きかかえる姿など見たことがなかった。
どこか冷淡で、母親の自分にでさえ距離を置いた態度が普通の息子。
「知っていたと思いますよ。詳しいことは言えませんけど。」
相川はそういって控室に向かった。
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