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加奈子は駅で美鈴と待ち合わせし一緒に行くことにした。
繁華街の入り口のお洒落な個室タイプの居酒屋が合コンの会場だった。
個室タイプだから店の入り口付近はさほど騒がしくなく入りやすい。
入り口で名前を言うと部屋に案内されたが部屋の中には井川をはじめ五人ほどの男が座っていた。
女子は三人いて、社内の女子ではなかった。
加奈子は少し違和感を感じていた、普通なんだけどガツガツしていない?
合コンなんて社交的な加奈子は大学生時代はよく行った。
女子か男子かどちらかまたはどちらにも肉食系がいるのが普通なのに・・・
「佐伯さん久しぶり。荒井 由真覚えてないかな?」
美鈴は自己紹介する由真をよくみた。
大人になっているけど、見たことがあるような。
悩んでいる美鈴のまえで由真は眼鏡をかけて見せた。
「ああっ、由真ちゃん?」
荒井由真は美鈴の高校時代に同じ図書館で勉強していた大人しい女の子だ
った。一緒に来ている二人は由真の職場仲間で歯医者の事務で三人は勤務していた。
キャアキャアと再会を喜んでいると、
「俺は森川 太一でこっちは多田 春樹であっちは市川 巧。」
森川はみんなを紹介した。
「森川君は美鈴ちゃんと同じ高校だったし、多田君や市川君は大学が同じだったって。」
由真は今日のメンバーを合コンという名前の同窓会みたいな?と笑った。加奈子はあっけにとられてしまった。
「みんな姉さん繋がり?」
「ああ、大人しい子だったけど佐伯さんが人が変わったみたいに誰とも付き合わず、声もかけにくいような感じだったし、でも荒井さんが佐伯さんに会いたいって言うからセッティングして井川に頑張ってもらったんだ。」
そう言う森川は荒井の職場に患者として通院していて仲良くなったらしく、ラインで昨日の撮影の話になったらしい。
「高校時代の佐伯さんは女子から人気高かったのよ~知ってた?」
由真は高校時代の美鈴が身長も高く、誰にでも優しいから憧れの女性と女子からの人気が高かったと話した。
「男の子が近づかないようにブロックしていた子もいたくらい。」
思い出して笑う由真は美鈴自身もしらなかったことを教えてくれた。
「なんだそれ~大学の頃はスタイルがよくて人当たりもいいのに声をかけにくい感じだったよ。」
多田と市川は学部も違ったから美鈴も覚えてはいなかった。
高校の時に声をかけようとしたらさ、女子に囲まれた経験者が俺です。
思い出しても怖かったと森川は話す。
「井川が佐伯さんと隣の席で仲がよいみたいだったし、声をかけてもらったんだ。」
多田はそう言って井川の肩をだいて楽しそうに飲んでいた。
「すいません。昨日の今日なのに・・なんかラインで盛り上がったみたいだったし、社内の空気も異様だったからよからぬ男もいるんじゃないかと余計なことかもしれないけど。」
井川は心配していた。初めて美鈴にあったとき小刻みに美鈴が震えたことや冷や汗をかいていたこと、サイトで症状を調べたら恐怖症だとわかって距離を保って接してきた。最近は症状も出なくなって少し笑ったりするようになった彼女がよからぬ男に声をかけられたり、誘われたりして事件がおこらないか心配だったのだ。
「姉さんの周りっていい人多いね。」
うっすら目に涙をためながら感動している加奈子は感動のあまり状況報告を怠っていた。
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