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正直この花さんという人は空気が読める人ではない。
そんなこと幼い頃から知っている相川はこの場を切り抜けることだけを考えることにした。
「ソフィアもいるし、食事に行かない?」
ほら~そうきたよ。相川はやっぱりとしか思えずチラッと鷹崎をみて、見たことを後悔した。
表情は変わっていない、ただただ不機嫌極まりない無表情だったのだ。
「ずいぶんそのモデルを大事にしているみたいですが、僕は降ろすと言ったはずです。この件については決定事項だったはずですが?」
ソフィアに一瞥もせず、花に言った。
「彼女はモデルではないのでしょ?これからまたイメージモデル探すとなると時間や経費がかかるのよ。だから私の独断で彼女は外さないわ。」
この勢いではまた話が長くなると判断した相川は鷹崎に急ぐように促した。
「貴方が相川社長ですか?社長が戻ればいいんじゃないですか?鷹崎専務はまだ話もあるようですし、食事しながら謝罪もしたいし。」
なんなんだこの女は。確かにスーパーモデルの仲間入りをして人気は高いがどこか常識のない言動が相川は好きにはなれなかった。
相川は顔を引きつらせながら
「ソフィアさんでしたっけ~うちの社のことは貴女がどうこういう立場ではないでしょう。とにかく鷹崎も帰社する必要があるのは確かですから。」
相川のソフィアの評価は決まった。
俺は好きにはなれない人種だし、この手のタイプは勘違いしている。
確かにモデルとして使うのもどうかと思えるくらい人間的に嫌いだった。
「ソフィアは鷹崎専務とお話したいって花さんに頼んでいて花さんも応援してくれたし。やっと会えたのだから邪魔しないでくれます?」
この女も空気が読めないのか、ソフィアは鷹崎の腕に自分の手を絡めた。
鷹崎は無表情で
「離していただけますか?」
怒ってるよ怒ってる・・そう思う相川だが自分もまた空気が読めない二人に苛立っていた。
「母さん、以前に言いましたよね。わかってないのですか?」
花はことあるごとに、息子に女性を紹介してきた。
母親が紹介するのだから相手も期待するのだろう、しかもかなりシツコイタイプの女が多いのも厄介だった。
「貴方がいつまでも特定の女性がいないから・・。」
花は自分には悪気はないと言いたいのだろう、息子が何年も片思い中だということを花は知らない。
この間、少しは鷹崎が美鈴に好意があることくらい解っただろうにと相川は思うが。
「自分で見つけますから。迷惑ですよ。」
ソフィアの手を振りほどいて、鷹崎は振り返りもせず部屋を出た。
「花さんアイツを怒らせないでくれますか?」
相川は小声で「潰されますよ。」そう花の耳元で言った。
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