「カイト」と拗らせ

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だから、仕事に追われて初恋は影を潜めた。 恋愛より仕事。 気がつけば27歳の頃に厄介なことが 「結婚しろ、見合いしろ。周囲が今まで以上に騒がしくなって弁護士事務所を辞めて相川と起業したんだ。海叶を連れてアメリカで治療をうけさせたかったしね。」 この頃には渡米が決まっていた。 海叶には時間がなく、助けるには心臓移植しかなく知人の手を借りて連れて渡米することにしていた。 「美鈴は五年は恋愛しない。そう言ったから五年で帰国する予定で会社を安定させたんだ。」 加奈子はため息をついた。 この男は拗らせてる。 「姉を秘書にするなり、告白するなりすればいいじゃない。」 「いや、そのつもりだったよ。相川に言われたんだ、加奈子ちゃんが認めない だろうって。しかも、助けたとき美鈴は意識が無かったし。俺を俺だとわから ないかもって。」 このヘタレは。 冷めた目で見る加奈子。 「姉の五年は貴方らしき人に会いたいと言っていたわよ。姉はね優し過ぎるのよ。」 加奈子は少し考えてから 「協力するわ、でもその前に姉コンプレックスと自信を取り戻させないと。」 地味な服装や目立たないような行動。 何度も変えようとはしたが、目立ちたく無いっていう姉の意見を尊重してきた。 「海叶さんはどうなったの?」 「助かったよ。今は西海岸で暮らしてる。」 記者にはなれなかったが、女医さんと結婚して暮らしているらしい。 「今回買収した会社の発表がある、そこで計画してることがあるんだが。」 姉を変える事が出来るなら 「協力はするわ、でも秘書なんて私は無理だよ。」 「君は美鈴を巻き込んでくれたらいいよ。秘書なんて建前だからさ。」 加奈子は拗らせ専務の計画の片棒を担ぐ事にした。 叔父の事件の時に助けてくれた、両親の事故の証拠も用意してくれた。 拗らせてヘタレだけど、一途でマヌケなこの男を信じる事にした。 自分を秘書にした経緯はともかく、姉を秘書にしていたら姉がターゲットにな ってと考えるこの男は、意外に計算高い。 「私は、姉さえ幸せならいいのよ。」 この目の前の男が、姉に相応しいかどうかを知るには近くにいることが一番だと加奈子は思った。 相応しく無いなら遠ざけるまで。 加奈子は加奈子で作戦を練りはじめた。
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