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美鈴から見た鷹崎は、スマートに優しく紳士的で188㎝もある長身は身長コンプレックのある自分と並んでもコンプレックを感じないくらいで、容姿は整っていてドキッとするくらいで眼鏡の奥の瞳はいつも優しい。
弁護士をしていた経歴だけでなく現在の仕事でも有能すぎるくらい有能でそんな彼が「ゆっくりでいい。」と病を知りつつ自分を求めてくれている。
10年も前に出会っていて、5年前は影からずっと助けて見守っていてくれていたでも彼は自分以外の女性を選ぶことが出来るのに本当にいいのか?
だから彼にどうしても聞きたかった。
「私で本当にいいのですか?私は普通には恋愛は難しいかもしれないです。」
そう言うと彼は「大丈夫です。」そう言ってそっと抱きしめてくれた。
「僕は待てますから、僕達は僕達の恋愛をすればいいのですからゆっくりでいい。」
美鈴は抱きしめられて怖いと思うどころか心地よいと感じている自分がいることに気が付いた。
「たぶん、私は鷹崎さんが好きなのだと思います。」
鷹崎は驚いた顔をしたがすぐに破顔して、
「僕はずっと好きでしたよ。」
そう言うとそっと額に優しいキスをしてここから始めましょうと言った。
美鈴の為にゆっくり始めようという鷹崎の気持ちは彼女の心の壁を壊すのでなく、すり抜けるように真摯な愛情を彼女の心に届けてくれた。
「彼なら大丈夫」そう思えるからこそ車に戻るときは自然に手を繋いで歩いて穏やかに二人の交際はスタートした。
マンション前で彼は寂しそうに美鈴を見つめるとまだ一緒に居たいという思いを隠そうともしない、また美鈴も同様で。
「名残惜しいですね、加奈子ちゃんが心配しますね~。」
「そうですね。」
「パーキングに停めますから少し挨拶していきます。」
気恥ずかしいからまた次回でと言ってみたが彼は恋人として挨拶させて下さいと真面目な顔をして譲らなかった。
「はいお願いします。」と美鈴が言うと
「行きましょうか。」と言って一緒にエントランスを通り部屋のチャイムを鳴らした。
加奈子が来客だと思って「どなたですか?」とインターホンの受話器を取ると「鷹崎です」と紛れもなく鷹崎の声がして、何事だと加奈子はそ~っと玄関ドアを開けるとそこには恥ずかしそうにしている姉と笑顔の鷹崎がいた。
「ただいま。えーっと。」
姉が赤い顔をしてモゴモゴしている様子は可愛い。
その様子を見ている彼もまた同様なんだろう、デレてますよねと言いたくなるのをグッと我慢して「どうぞ」と言った。
「加奈子?どうぞって?」
「美鈴さんとお付き合いしています、鷹崎隼人です。夜も遅いですから今日はここで失礼します。」
真面目な顔でそう挨拶をして鷹崎は本当にそれだけで帰った。
加奈子はマメ鉄砲を食らった鳩のような顔をしてしまったがふと我に返ると笑いをかみ殺しながら言った。
「姉さん専務あれだけ言いたかったのね・・マジでウケる~。」
加奈子は大笑いしながらボスッとソファーに座ると「さあ話を聞きましょうか」と言った。
頬を赤くしながら「もう加奈子!鷹崎さんに失礼でしょ!」と姉は言うが、加奈子は楽しくてならなかったし嬉くて姉から急展開の今日の話を聞きださなくては眠れないと思う。
姉は帰りの出来事を顔を少し赤くしながら話してくれた。
鷹崎と姉の出会いが10年以上前にあって今に至るというのが運命だと加奈子は思うし何より男性恐怖症がある姉が鷹崎を受け入れている事実だけで加奈子は反対することはない。
今までも逆に応援してきた二人がやっと交際を始めたという報告は歓迎すべき事だ。
「正直、やっとって感じなんだよね~でも専務ってある意味用意周到というか抜け目がないな~。」
加奈子は鷹崎を認めていがまた見直した。
姉に無理強いをせず見守り姉にストレスを与えずここまで待ってあの場所の記憶を塗り替える。
「姉さん幸せになって。」
加奈子は姉に抱きついてそう言った。
一人で全てを背負って自分を大学まで出してくれた姉が幸せになることが一番加奈子が望む事だった。
鷹崎は姉を傷つけないし守るだろう。
彼は何を犠牲にしてもそうすることに躊躇しないだろうと確信すら出来た。
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