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「誰? 学校関係者?」
そこでようやく男は俺のほうを向いたよ。
大柄な割には痩せて絞まった色黒の体つきで、頬が出張った純粋なアジアのオスの顔立ち。人当たりの良さそうな甘い表情とは裏腹に、やけに野心に満ちた眼光だ。俺はそれを見逃さなかった。
「何言ってんだよ。 俺はお前のクラスの担任だよ」
妙に皺がれた声だと思ったね。年寄りとまではいかないが、何かこう、部品をひとつ付け忘れたようなそんな声。まぁそれはいいや。
(新しい担任?)
そんなこと聞いてないぜ。いや、それもそのはずだな。思えば先週辺りから俺、授業に出てねぇじゃん。
何せ今の俺と言ったら、放課後のセイジとの会話だけあれば他はなんでもよくなっちゃっててさ、学生らしいことやってんのもバカらしくなってたわけだよ。
だってこの町で耳に障らない言葉をくれるのはセイジだけだもの。たぶんこれから先もずっとセイジだけ。そう思ってるからさ。
「お前、出席番号14番だろ? なんで教室に来ない。着任以来ずっと見かけないから、俺はてっきり不登校かと思ったぞ」
「はぁ・・、一応毎日登校はしてるけど。もう授業を聞く必要性を感じなくったっていうか、たぶん、そういう理由です」
なんでかわからないけど俺は正直にそんな事を言ってしまった。
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