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プロローグ
産まれてきた理由を真剣に考えてみた。別段どうこうといった悩みがあったわけではなく、ふとした拍子から生きている実感というものを感じ取ることができなくなったからだ。
「オレ、頭おかしいのかな?」
傍らに座る男にそう聞いてみたが返事はなかった。
部屋の片隅にぽつんと浮かぶ洗面台の上、心なしか右にゆがんだその四角形にとりとめもない独り言をいつまでも聴かせている。いつの日かこの一途が通じて思いがけぬ答えが返ってくるかもしれない。そんな非現実的な夢を抱いていた。
「オレさ、やっぱり頭がおかしいみたいだ」
最後の言葉が口元から漏れて白い壁に吸いこまれていく。
そうだよこんな話、べつに誰も聞きたくはないか・・・。
とりあえず、今ここにある現状が俺にとっての大切な総てであったとしても。
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