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お喋りな3人
「いつまで同じ格好させるんだろうね。」
「腰が痛くて仕方ないよ。」
2人の女性はぶつぶつ文句を言いながら、腰をかがめて作業している。2人ともみずぼらしい格好をしていて、額にはじんわり汗が浮かんでいる。年は2人とも40代くらいだろうか、腰を痛そうにしている。
「あんたはいいねぇ、1人だけ立ち仕事できてるんだから。」
腰をかがめた1人の女性が、立ち仕事をしている同じ年くらいの女性に声をかけた。
「そんなことないですよ。若干私も腰を曲げながら作業してるんですから。」
腰をかがめた女性はムッとして
「私なんて頭に血がのぼりそうだよ。どれくらい時間が経ったのかね?」
と皮肉を込めて立ち仕事をしている女性に問いかけた。
「今が2021年だから…164年かなぁ。」
「164年!!!」
「164年ずっと私たちこの体勢で生きてきたのね。」
女性たちは口々に言った。
「でも、こうして色んな人に見てもらえてるだけありがたいんじゃない?私たちの仕事ぶりを。」
腰をかがめた女性は感慨深そうに言う。
「見てくれてるのはありがたいんだけど、私たち視線が下に落ちてるからお客さんの顔見えないのよね…。喋り声か視線しか感じないの。」
「それもそうね。熱ーい視線は感じるのに、どんな方なのか分からないなんて…。」
「あなた、ご主人がいるのになんてことを!」
3人の女性たちはぺちゃくちゃ今日も美術館の絵画の中で喋っているのであった。
彼女たちの絵画の下には
落穂拾い ジャン=フランソワ・ミレー
の名札が貼ってあった。
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