10−1、6秒間

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 ルカは思う。ここ数年で、サラの自分への好意が行き過ぎたモノになっている気がすると。  自意識過剰と言われるのも仕方がない。むしろそうでありたい。そう言われて笑い飛ばしたい。  サラの好意は最早偏愛と化している気がする。別に好かれることが嫌というわけではない。むしろ大変ありがたいモノではある。  しかしここ数年の、特にルカが25歳になってからだろうか、つまり大体3年前辺りから、サラの言葉にかなり恐怖を感じるばかりなのである。 「ねえルカ、貴方、いくつまでなら許せる?」  口説かれようとしているのではないか、と直感的に思った。いや、この頃はまだ、自意識過剰だな、とどこかアホらしく思っていた。  その時は適当に「ケイト程の差であれば」と。  ケイトというのは、サラの本当の直属で仕えるメイドの女性である。誰もが認めるクールレディー。サラの6歳上、ルカの4歳下。  実を言うとその3年前まで、ルカはケイトのことを本当に好きでいた。  寡黙で愛想は全く無いが、仕事は確実に行っている彼女に、いつの間にか惚れていた。  3年前、ルカは意を決して想いを伝えた。あっさりフラレたのだが。  とはいえそれ以来でも、ルカはケイトのことが好きである。ただその時とは違う、尊敬の念を込めた好意だ。それについては、ケイトも分かっている。  まあそんな話は広まった。当然のように、サラの耳にも入ったらしく。  サラが突然髪を切った。それまで腰ほどの長さのあった、金色の髪を、あっさりばっさり肩の上辺りまで切り揃えた。  その頃のケイトの髪は、今のように髪を一つに結べるほど長くはなかった。 「髪が短いほうが、いいかなって思ったの…」  サラはそんなことを恥ずかしそうにしながら、ルカを見て言った。  それからまたある日のことだった。サラとルカはよくふたりきりになる時があるのだが、その時のことである。  偏愛を確信する瞬間が訪れた。 「そのホクロ、貴方の愛するべきポイントだと思うの。貴方のステキなポイント…みんな思ってる……はぁ…食べてやりたい……そしたらみんな気付かないのよね…」  そう言いながら、サラがルカの右目頭の少し先にあるホクロを、なんとも艶やかな微笑みとともに触れた。  流石にこれには背筋を凍らされた。軽く身の危険を感じた。
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