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それから次の日。サラとルカの誕生日前日。
「ねえルカ」
サラが、部屋を去ろうとするルカに話しかけた。
「私はこれから夕食の仕度があるのですが」
「何言ってるの、逃げてるだけよ。あと30分あるわ」
その通りである。
「ね、今日の1度目」
そう言った命令をされると、ルカは従うしかない。
レイとマアサはルカに、サラの執事として振る舞う際に2つの約束事を言い渡していた。
1つ、「可愛い可愛い愛する娘に手を出さないこと」
『10の呪い』への警戒もあるだろうが、まあ妥当だろうとルカは思う。まだまだ若い部類に入るルカに魔が差して、つい――と、取り返しのつかないことになったら大変だ。
勿論ルカは、そんなことはしてたまるかと強く決めている。
1つ、「1日に2度、『どうしてもやってほしいこと』を承諾させる権利をサラに与える」
基本的にルカはサラの言うことを聞いているし、逆らうつもりはない。ただ、ルカはあくまでもレイとマアサに仕える者である。ルカがどうしても聞きたくない命令をされた時は、二人の名の元に拒否することが可能ではある。
そんなことを言わずに、どうしてもと言う時はお願いと言われた。主にマアサに力強く。
この2つの約束はサラが10歳、つまりルカが20歳になった時に交わされた。ルカが成人したためである。
可愛い愛娘の側に大人の男がいるのだ。妥当なことだろう。そうだろう。
以前からサラとルカは交流があったが、なんというか、サラがまだ幼いということもあってか、かなり緩い関係性であった。
「2つ目、解消されねーかな…」
「何言ってるの。いいから、ねえ、1度目よ? 『私の話を聞いて』」
「……何でございますか?」
ケイトが相変わらずのクールな様子で「失礼いたします」と、今日のサラの寝間着を持って来た。サラは気にせず続ける。
「キッスにはね、する場所によって異なる意味があるらしいの」
ルカとケイトは思わず吹き出した。
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