10−1、6秒間

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 それから次の日。サラとルカの誕生日前日。 「ねえルカ」  サラが、部屋を去ろうとするルカに話しかけた。 「私はこれから夕食の仕度があるのですが」 「何言ってるの、逃げてるだけよ。あと30分あるわ」  その通りである。 「ね、今日の1度目」  そう言った命令をされると、ルカは従うしかない。  レイとマアサはルカに、サラの執事として振る舞う際に2つの約束事を言い渡していた。  1つ、「可愛い可愛い愛する娘に手を出さないこと」  『10の呪い』への警戒もあるだろうが、まあ妥当だろうとルカは思う。まだまだ若い部類に入るルカに魔が差して、つい――と、取り返しのつかないことになったら大変だ。  勿論ルカは、そんなことはしてたまるかと強く決めている。  1つ、「1日に2度、『どうしてもやってほしいこと』を承諾させる権利をサラに与える」  基本的にルカはサラの言うことを聞いているし、逆らうつもりはない。ただ、ルカはあくまでもレイとマアサに仕える者である。ルカがどうしても聞きたくない命令をされた時は、二人の名の元に拒否することが可能ではある。  そんなことを言わずに、どうしてもと言う時はお願いと言われた。主にマアサに力強く。  この2つの約束はサラが10歳、つまりルカが20歳になった時に交わされた。ルカが成人したためである。  可愛い愛娘の側に大人の男がいるのだ。妥当なことだろう。そうだろう。  以前からサラとルカは交流があったが、なんというか、サラがまだ幼いということもあってか、かなり緩い関係性であった。 「2つ目、解消されねーかな…」 「何言ってるの。いいから、ねえ、1度目よ? 『私の話を聞いて』」 「……何でございますか?」  ケイトが相変わらずのクールな様子で「失礼いたします」と、今日のサラの寝間着を持って来た。サラは気にせず続ける。 「キッスにはね、する場所によって異なる意味があるらしいの」  ルカとケイトは思わず吹き出した。
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